ドイツで最も不当な評価を受けてきたストライカー、マリオ・ゴメス

ここまでの私のゴメスの印象はというと、そのポテンシャルこそ高いが、本番に極めて弱いというものだ。また、中央にデンと構え、あくまでも自らの決定力で勝負するゴメスはドイツ代表の高速に連動したサッカーとの相性は今一つだった。これがストライカーとして実力が劣っても、黒子となり周囲を活かすことに長けたクローゼとの差だったとも言ってよい。折しもドイツ代表は2列目の人材が豊富だったので、寧ろそこからの得点が多くなっていた。

更にゴメスの弱点としてしばしば指摘されたのが性格的に繊細、神経質であることで、この印象は私にも大いにあった。というのも、ゴメスはその高い得点率の一方でダメなときはそのプレースタイルから全く試合に参加していない印象を与えた。モデルみたいな容姿やジェルでカチカチに固めた髪の毛を試合中頻繁に触っている点もファンの気に障っただろう。そして、それに対する周囲の不当な批判にいちいち過敏に反応したからだ。

しかし、もはや忘れられたと思われたゴメスに再びチャンスは舞い込んできた。EURO2016を前にしてドイツ代表の監督であるヨアヒム・レーヴはマリオ・ゲッツェを偽9番として起用するプランを固めていたが、これが機能しないことが大会前から徐々に明らかになりつつあり、クラシックなFWであるゴメスに再び白羽の矢が立った。折しも、トルコでプレーを続けていたゴメスは再び得点を量産し調子を取り戻していた。

そして、この大会をゲッツェの偽9番でスタートしたドイツは、ボールを鮮やかに回すものの、ペナルティエリア内で相手に全くと言っていいほど脅威を与える事が出来なかった。しかし、ゴメスが第3戦からFWにどっしりと座ることで相手DFを引き付け、目に見えて効果的な攻撃を繰り出せるようになった。

この時すでに31歳のベテランとなったゴメス自身のコメントも至極リラックスし、周りの若い選手を活かすことに徹している様子が伺え、明らかに精神的に成長した跡が見て取れた。この大会ドイツにとって最も痛かったのはゴメスの怪我による準決勝フランス戦の欠場だろう。ゴメスを欠いたドイツは試合を完全に支配したが、相手ゴール近くで得点につながる脅威を与えることができず敗退した。この大会にして初めてゴメスはそれまでの周囲の不当な批判から解放されたと言ってよい。

そして、現在33歳となったゴメスの最大の目標は今年のロシアW杯への出場だ。この時期に敢えて降格争いをするとみられる古巣シュトゥットガルトに移籍したのは、安定した出場機会を確保し、監督のレーヴにアピールするためだろう。現在かつてないほどの激しい競争があるドイツ代表で、一見するとゴメスがメンバーに加わる可能性はそれほど高くないように見える。

しかし、EURO2016の教訓から間違いなくレーヴはゴメスのようなクラシックなタイプのFWを1人は連れていく。ライバルとなるのは同じくこの冬にFCバイエルンに移籍したサンドロ・ワーグナーだろう。ゴメスはワーグナーより機動力、オールラウンド性で劣る。しかし、ほぼ全員が20代の選手で構成されるドイツ代表において、大舞台や海外での経験が豊富なゴメスが果たせる役割は多くある。それは決して過小評価するべきではないだろう。そして、ゴメスのキャリアを通じたその実力と存在価値が正当に評価される日が来る事を願っている。

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