メキシコ湾流の減速でヨーロッパの気候が大きく変化する恐れがある

私の住んでいるミュンヘンは北緯48度に位置している。これは日本近辺で言えば北海道よりも更に北、サハリンの州都であるユジノサハリンスク辺り、或いはモンゴルのウランバートルとほぼ同じくらいの緯度であるが、4月の平均気温は概ね北海道の札幌市と同じくらいである。

北の大都市であるハンブルクに至ってはロシア、シベリア地方のイルクーツクと同じ緯度である。海洋性気候と大陸性気候の違いがあるとは言え、ハンブルクの方が緯度の割には遥かに暖かい。これはメキシコ湾流と呼ばれる大西洋を通過し、ヨーロッパに到達する暖流の影響によるものである。

このヨーロッパの気候に非常に重要な役割を果たしている海流はドイツ語で”Golfstrom”(ゴルフシュトローム)と呼ばれており、ドイツの国民的大衆車であるフォルクスワーゲンの”Golf”の名の由来となった。本来植物など育たないような高緯度の地域で野菜や果物の収穫が可能になったり、南の沿岸でヤシの木を生育したり出来るのも、このメキシコ湾流のお陰である。このメキシコ湾流が無ければ、ヨーロッパの平均気温は5-10度も下がると言われている。

しかしこの程、このメキシコ湾流の流れが弱まっているという事実が確認され、ドイツでは大々的にニュースになっている。元々このメキシコ湾流の減速は長年指摘されていたが仮説の域を出なかった。今回はこの仮説が国際的な研究チームにより確実なものとして発表されたものだ。発表によるとメキシコ湾流は過去70年間で約15%減速しているとの事だ。

本来、ヨーロッパに到達したメキシコ暖流は、蒸発して塩分濃度が高くなっているだけでなく、北極圏、グリーンランド辺りで冷やされることでその重さが増す。重さが増した水は海中深くに沈んでいき、海流はそのまま再び南方へ再び戻っていくと言う、人類の歴史において不変のメカニズムを保ってきた。

しかし、昨今の地球温暖化の影響で北極圏、グリーンランドの氷が解け始めており、この溶けた水とメキシコ湾流の海水が混ざり、海水の塩分濃度が薄まっているとの事だ。塩分濃度が薄まる事によって、海水はこれまで程重量が増さず、海中深くに勢いよく流れて行かなくなった。その結果、メキシコ湾流全体の流れが弱まっている。これ以外にも理由があるかもしれないが、地球温暖化が原因という点で専門家の意見は一致している。

このメキシコ湾流の減速でどのような影響が出るのかはまだ誰もはっきりしたことはわからない。しかし、2015年の天気はこのメキシコ湾流の減速と関連があると言われている。この年、北大西洋の海水温は異常に低く周辺は記録的な寒さだった一方で、ヨーロッパは記録的な熱波に襲われた。

つまり、この地域の低い海水温によって気圧の分布がこれまでと異なるものとなり、これはヨーロッパの熱波の到来を促進する効果があると見られている。メキシコ湾流が弱まったら逆にヨーロッパは寒くなるのではないかと考えるが、ひとまず15%程度の減速はヨーロッパの陸地を寒冷化させる程十分なものではないらしい。

何れにせよ、このメキシコ湾流の減速は我々の生活大きく変化させる可能性があり、既にその変化は始まっている。残念ながら、この傾向を変えるために近い将来、我々庶民も痛みを伴う対策を強制されるのは間違いない。

因みに、あくまで私の感覚であるが、ヨーロッパと日本は概ね反対の天気の事が多い。つまりこちらが熱波のときには、日本は冷夏。あるいはこちらが大雨の時には、日本は快晴といった具合だ。世界の天気は一定のルールによって分散しているが、この分散の仕方が変化していくことになるのだろう。

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