ヨアヒム・レーヴによってドイツ代表を干されてしまった実力者たち

3番目に挙げたいのは今年34歳で引退するバイヤー・レバークーゼンのFWシュテファン・キースリングだ。190㎝を超える大型ストライカーのキースリングは若い頃から将来を期待された選手であり、FCバイエルンもその獲得に興味を持っていたとされる。2010年には控えながらW杯のメンバーに選出された。しかし、この2010年のW杯の3位決定戦に出場して以降、キースリングは代表に呼ばれなくなった。キースリングのプレースタイルがレーヴのシステムにマッチしなくなってきたからだ。

というのもレーヴは2010年以降、縦への速さを最重視したサッカーから、急速にポゼッションサッカーに舵を切った。それと共にFWにはフィジカルの強さや決定力よりも、よりテクニックが高くコンビネーションを得意とする選手を配置するようになった。引いた相手をどのようにして崩すかが、再び世界の強豪となったドイツの新たなテーマとなってきたからだ。

しかし、キースリングのプレーはそのヘディングの強さ、1対1の強さを活かしたスタイルで、サイドからのクロス、セットプレー、カウンターの状況でそれは最大限に発揮された。もともと高いボールを嫌い、素早いコンビネーションを基盤にしたレーヴの新たなシステムとの相性は最悪だったといって良い。

また、このポジションには似たタイプの格上マリオ・ゴメスが既に存在しており、敢えてその上にキースリングを代表にフィットさせる意味はないと判断されたのだろう。レーヴはキースリングが自らのシステムと合わない旨を本人に伝え、キースリングもレーヴが監督である限り、今後代表でプレーすることはないとインタビューで述べた。

しかし、そのような状況でもキースリングのクラブでのパフォーマンスが決して落ちていた訳ではない。とりわけ2012/2013年のシーズンではブンデスリーガで25得点を挙げ得点王に輝き、キャリアの絶頂だった。折しも翌年2014年のW杯に臨むドイツ代表は唯でさえFWの人材が不足している上に、本来の主力であるミロスラフ・クローゼとマリオ・ゴメスが怪我に悩まされており、キースリングの代表復帰を求める声はかなり大きかった。しかし、レーヴは決して代表にキースリングを呼ぼうとはしなかった。

最終的にドイツは2014年のW杯ではFWの位置に本来2列目のトーマス・ミュラーをグループリーグで起用し、KOラウンドからはこの大会唯一のFWとして参加したミロスラフ・クローゼを起用、見事に優勝を果たした。そして、クローゼが代表から引退した2014年以降、レーヴはFWの位置にMFマリオ・ゲッツェというオールラウンダーを配置し、そのポゼッションからの鮮やかなコンビネーションサッカーを極めようとした。

しかし、この試みはEURO2016で失敗したといえるだろう。最終的にレーヴはFWの位置に再びマリオ・ゴメスというクラシックなタイプを起用せざるを得ず、そのゴメスが怪我で離脱するとFWが存在しないドイツは相手ゴールに全く脅威を与えることが出来ず敗退した。そして、ここでキースリングという選択肢がなかったことは非常に惜しまれるといって良い。

ドイツ代表はこの時の教訓から、今回のロシアW杯では確実に生粋のFWを2人以上は連れて行くだろう。キースリングも今回ならチャンスがあったかもしれない。そういう意味では活躍した時期が非常に悪く、不運な選手だったと言えるだろう。

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