メルケルvsゼーホーファー、難民問題で亀裂が深まるCDUとCSU

ドイツの中道保守の政党にCDU(キリスト教民主同盟)とCSU(キリスト教社会同盟)がある。両者は別々の政党であるが、姉妹政党であり国政においては連合して一つの勢力とみなされていおり、現在の連立政権の最大勢力でもある。CDUの党首は現在ドイツの首相であるアンゲラ・メルケルであり、バイエルン以外のドイツ全土にまたがる政党だ。一方のCSUはバイエルンのみで活動する地域政党であり、CDUと連合する事で国政に参加している。党首は現在のドイツ内務大臣でもあるホルスト・ゼーホーファーである。

この両者は1949年以来、ドイツの連邦議会において統一勢力を築いてきたが、最近は意見の対立が目立つようになった。そして、その最大の争点は例によって難民政策である。もともとこの件に関してCDUとCSUは意見が対立していたが、現在、両党首のメルケルとゼーホーファーの対立は過去に無いほどエスカレートしており、長年続いたCDU/CSU連合崩壊の危機とまで言われている。

既に知っての通り現在ドイツはメルケルの音頭の下、EUのルールに基づきドイツに入国して来た難民の処遇を決めている。これらの難民の多くはイタリアやバルカン半島を通過してドイツを目指して来る訳だが、そのうちの多くはEU内の最初に立ち入った国で既に難民として指紋を登録している。現行のルールだとそれらの難民はドイツに入国が可能で、ドイツでの滞在資格を審査されることになる訳だが、この審査は何か月もかかる。

結局、そのような処遇の決まらない難民が大量に国内に溢れて犯罪に走ったり、そもそもその中にはテロリストも混じっていたりした。ブレーメンの役所などは難民申請してきた者に右から左に滞在許可を与えていたことが発覚して現在大問題になっている。更に数日前はイラクからの難民による凶悪犯罪が明るみになった。

ゼーホーファー率いるCSUはもとより難民の受け入れ数に上限を設ける、或いは処遇の決まらない難民が一時的に滞在する施設を各州に建設するべきだと主張し、メルケルと対立してきた。更にゼーホーファーはここにきて、難民であっても必要な書類を所持していない者、既に他国で難民として指紋を登録している者などはドイツ国境で入国を拒否すべきと、更に強硬な措置を主張している。これらのゼーホーファーの主張は「難民政策のマスタープラン」として近日中に提出されるとされている。

メルケルはあくまでも問題はEUのルールに則り、EUの国々と共同歩調をとって解決すべきであるという姿勢を崩しておらず、ゼーホーファーのプランには断固として受け入れない意思を明確にしている。しかし、ゼーホーファーはさもないと一方的に自らのプランを実行するとメルケルに脅しをかけた。これに対しメルケルはEUの首脳会談が開催される今月末まで待つよう要請している。自らの主張は1ミリも曲げないと強硬な姿勢をとるCSUに対してCDUも多くの議員がメルケルを支持しており、この対立が軟化する兆しは見えない。

そして、どちらが国民の支持を得ているかと言えば、言うまでもなくゼーホーファーである。難民が来て喜ぶ者など誰もいない。当初は難民の憧れになる程発展したドイツは素晴らしいなどとポジティブな文言も聞かれたが、今やそんなことは誰も言えない。役所の仕事はパンクして、テロや凶悪犯罪も実行された。初めから分かり切っていたことでもあるが、大量の難民が入ってきたことによっての国内の治安の悪化や社会の複雑化による問題は深刻なものとなっている。

とは言え、EUの中でドイツ以上に経済力があり、かつ人間的に難民を受け入れられるほどの教育を受けた国は他には無いのも事実だ。ドイツがEUの他国を顧みずゼーホーファーのプランを独断で実行した場合、EUは本気で崩壊する。それを望むなら話は別だが、現在の国際的な秩序を保つ上でゼーホーファーのプランはリスクが高すぎるだろう。

折しも、アメリカという超大国が保護貿易主義をゴリ押しして、各国は単独で対抗きない中、EUはかつて無い程団結することが求められている。そのEUの事実上のリーダーでもあるドイツが難民問題で匙を投げてしまえば全体的な問題が大きくなるのは明らかだ。

そもそも、やって来る難民自体の数はピーク時から大幅に減っており、本来なら不法入国者の国外追放や滞在許可手続きの迅速化、難民の社会適応教育が焦点となるべきだ。国民は不満だろうが、現在の情勢で難民を国境で追い返すというプランが実現するとは思えない。

しかし、CSUにとって重要なのは、10月にバイエルンで州議会選挙が控えており、この選挙で過半数の議席を獲得することでもある。その為には前回の連邦総選挙でAfDにごっそり持っていかれた票を取り返すことが大前提となる。おそらく10月の選挙までは大袈裟なアンチ・メルケル路線を前面に押し出して票集めに躍起にならざるを得ないだろう。

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