何故メスト・エジルは不当な批判に晒されてしまうのか

更に今大会前にはドイツで最も嫌われている政治家、トルコ大統領エルドアンと会合し満面の笑みで自らのサイン入りのユニホームを手渡した。確かに、これはエジルの政治的スタンスは別にして、極めて世間知らずで軽率な行為だったと言って良い。この写真がドイツでどのような反響を呼ぶか、多くの注目を浴びるスターだからこそ知っていなければならない。このテーマは現在でも燻っており、チームに少なからず悪影響をもたらしているだろう。エジルはこの件では固く口を閉ざしており、これも世間の心象を良くしていない。

そして、これはあくまで私の印象だが、エジルは当初の期待から言えば実際のプレー面でもここ数年伸び悩んでいる。若干22歳で移籍したレアル・マドリーで世界最高の「10番」としての評価を得るに至ったが、マドリーを去りアーセナルに移籍して以降、その評価は寧ろ下がった。

その突出したアシスト能力に比べ得点力が低いという事に加え、重要な試合において消えてしまうという精神面での弱さも指摘されている。そして、この批判はそれなりに的を射ていると言わざるを得ない。エジルは若い頃はもっとダイナミックな動きで、ゴール前に飛び出し得点する事も多かった。レーヴには1トップで起用された事もある。

しかし、レアル・マドリーでクリスティアーノ・ロナウドという怪物ストライカーとプレーして以降、エジルはほぼアシストに特化した選手として認知されるようになった。これはエジルのキャリアにおいて非常に惜しまれる事だと個人的には思っている。モウリーニョという勝負に徹するリアリストが監督だったのもあるだろう。

エジルはマドリーで名声を得ることに成功したが、選手としてのポテンシャルを犠牲にしたのかもしれない。寧ろあの時点でマドリーではなく、当時既に誘いのあったと言われるアーセナル、バイエルン、或いはバルセロナに移籍していたらエジルの可能性が広がったのではないか。何れにせよ、当初の期待からすれば、エジルのプレーには確かに物足りなさが残る。日曜日のメキシコ戦を受けて、次戦以降エジルをスタメンから外すべきだと言う意見は多い。

それでもヨアヒム・レーヴはエジルに絶大な信頼を寄せ、これまで不動のスタメンとして起用してきた。理由は簡単だ。エジルは他の選手には無い一瞬で違いを生み出すアイデアと技術を持っている。そして、誰も予想出来ない魔術的なラストパスを出せるからだ。光と影を持った選手である事は事実だが、エジルの代わりになる選手はいない。

ドイツがグループリーグ敗退の崖っぷちに立たされた土曜日のスウェーデン戦、私は多くの批判を浴びながらもレーヴはエジルを再びスタメンで起用すると見ている。そして、エジルはこの試合こそ、これまでの不当で悪意のある批判に自らのプレーで答えを出すべき時だろう。エジル個人にとっても、真価が問われる試合になると思っている。

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