トニ・クロース、メスト・エジルを批判する

ロシアW杯もフランスの優勝で幕を閉じおよそ1ヶ月が経った。バカンスを過ごしていたドイツ代表選手たちも軒並みチームに合流し、一部の国では既にシーズンが開幕した。ドイツ代表は最新に発表されたFIFAランキングで1位から15位に急落し、9月6日には新たに開幕するUEFAネーションズリーグの初戦で世界ランキング1位となったフランスとの試合を控えている。監督はひとまずヨアヒム・レーヴが留任し、心機一転、新たなメンバーで再出発と行きたい所だ。

しかし、残念ながらメスト・エジルの代表引退の後味があまりにも悪すぎた。選手や関係者はもちろん、世間もこのテーマについてはもはやうんざりという声もあるが、バカンスから戻って来たドイツ代表の選手たちはまずはこの件についてコメントを発さない事には始まらない状況でもある。

これまで、ノイアー、ミュラー、クロース、ヴェルナー、ブラント、ドラクスラーなどがこの件についてコメントしている。もちろん、これはサッカー界を超えた非常に繊細かつ政治的なテーマでもあるので、選手からしてみれば出来るだけ当たり障りのないコメントで凌ぐのが普通だろう。しかし、その中でもトニ・クロースはエジルの代表引退についてはっきりとした意見を述べた。その内容をSpiegel onlineから引用する。

“Grundsätzlich ist Mesut ein verdienter Nationalspieler und hätte als Fußballer einen besseren Abgang verdient gehabt. Ich habe viele Jahre mit Mesut gespielt und weiß, dass er ein lieber Kerl ist. Die Art und Weise seines Rücktritts war aber nicht in Ordnung. Der Anteil, der in seiner Erklärung gut und richtig angesprochen wird, wird leider durch den wesentlich höheren Anteil an Quatsch überschattet.

基本的にメストはドイツ代表の功労者でもあり、選手としてより相応しい終わり方に値した。メストとは長年共にプレーしてきた仲であり、良い奴であることは知っている。しかし、その引退の仕方は正しくない。彼の説明において正しく的を得ている部分も、それよりも遥かに多いくだらない内容で覆い隠されてしまっている。

Ich denke, dass er selbst weiß, dass es Rassismus innerhalb der Nationalmannschaft und des DFB nicht gibt. Ganz im Gegenteil: Wir setzen uns ja immer wieder aus Überzeugung für Vielfalt und Integration ein. Mesut war dafür ein gutes Beispiel, wie viele andere unserer Mitspieler auch.

僕が思うに、彼自身も代表チームとDFBにおいて人種差別がなかったことは知っている。実際には全く逆だ:僕たちは知っての通り常に多様性と調和へ確信をもって取り組んできた。メストは、他の多くの選手たちと同様、その良い見本だった。

Mesut wurde für das Foto kritisiert – und das zu Recht. Und er hat die Chance verstreichen lassen, sich dazu zu erklären. Trotzdem wurde er von der sportlichen Leitung und im Mannschaftskreis absolut unterstützt. Später wurde er – wie wir anderen auch – für die Leistung bei der WM kritisiert. Die Art der Kritik war sicher nicht immer auf gutem Niveau – aber da muss man als Spieler dann durch.”

メストはあの写真で批判されたそしてそれは当然のことだ。そして、彼はその件について自ら説明する機会をフイにした。それでも、チームの首脳陣や関係者から十分なサポートを受けていた。僕らと同じように、後から彼はW杯の出来について批判された。その批判のレベルは時に低かったのは間違いないしかし、選手としてそれは耐えなければならない。

エジルへの批判は確かに一部度が過ぎた人種差別的なものがあったのも事実なので、それまで耐えろというのは明らかに言い過ぎであるが、概ねクロースの主張はチームメイトの立場の発言として理解でき得るものだと言っておく。

エジル同様この写真で問題視されたもう一人のチームメイト、ギュンドアンはその内容の良し悪しは別にしても、大会前に自ら口を開いて説明することで騒動を収束させた。それがエジルの場合、一方的に差別されたと訴えてチームから去ってしまうのは、長年苦楽を共にしたチームメイトからすれば納得しかねるだろう。エジルの説明の大部分を”Quatsch”=「馬鹿げたこと」と言っているのはかなり辛辣な批判でもある。

それでもクロースは、代表チームにおけるエジルの功績に言及しており、”lieber Kerl”=「良い奴」とも言っているので、厳しい発言の中にも、エジルに対する敬意とチームメイトとしての親身さも感じられる。現状難しいかも知れないが、エジルが再びドイツ代表に戻って来る解決を模索するきっかけになって欲しい。同じ主力選手でもキャプテンのノイアーやミュラーはこのエジルの代表引退からは距離を置きたがる旨の発言をする中で、クロースが逆に踏み込んだ発言をしたのは、個人的にはポジティブに受け止めている。

選手の中ではこれまでのところ、ヴェルナーがエジルの復帰を望む発言をしている。今後注目されるのは、ここまでまだ沈黙を保ち続けているレーヴがどのような発言をするのかだ。また、主力の一人でもあり、いつも雄弁なフンメルスあたりの発言も気になるところだ。選手たちはスポーツに集中したいだろうが、まだ暫くこのテーマは燻り続けるだろう。

にほんブログ村 サッカーブログ ブンデスリーガへ