ドイツ語でのコミュニケーションで重要な「理由」の説明の方法

日本社会で生活する上で、コミュニケーションにおける「礼儀正しさ」と言うのは極めて重視される要素だと考えている。思いつくところでは、年上を敬い、正直である事。或いは、謝罪や感謝の意を頻繁に表現する事や、直接的に相手を否定しない事なども挙げられる。

これらの礼儀正しさはドイツで暮らしていても、私は日本人として忘れないようにしているつもりだ。しかし、当然のことながらドイツ人、あるいはドイツ語でのコミュニケーションにおいてはまた異なる礼儀が存在する。私の中ではそのうちの一つに、如何なることに対しても理由を述べるという点がある。

これはあくまで私個人の経験則なので、違うと思う方もいるかもしれない。しかし、実際に権威あるドイツ語の教育機関であるゲーテインスティテュートでも、初級の段階からいわゆる“argumentireren”=「論証する」ことのトレーニングを行った記憶があり、検定試験でもこのポイントは重視される。「論証」と言うと大げさに聞こえるが、要はちゃんと理由や根拠、因果関係を述べろという事だ。個人的にはドイツ語でのコミュニケーションをスムーズに行いたいなら意識しておくべきポイントだと考えている。

そして、その肝心の方法であるが、最も一般的なのが接続詞“weil”を使った従属文である。文法上“weil”は従属接続詞なので、動詞が一番最後に来る事に注意されたい。例文を示すと:

Ich konnte gestern nicht arbeiten, weil ich krank war.
病気だったので、昨日は仕事できなかった。

この“weil”と同様の機能を持った従属接続詞に“da”がある。この“da”“weil”には主な使い方に微妙な違いがあるが、単純に入れ替えても文法上間違いにはならない。敢えて言えば、“weil”はまず結果を述べた後にその理由を述べる時に使われるのに対し、“da”は先に理由を述べたいときに使用されることが多い。

また、“warum”=「なぜ?」の問いに対しては“weil”で答え、普通“da”は使わない。経験上“weil”は一般的に主に口頭と書面両方のコミュニケーションに使用され、“da”は主に書面で頻繁に利用される。

Da ich krank war, konnte ich gestern nicht arbeiten.
病気だったので、昨日は仕事できなかった。

“warum konntest du gestern nicht arbeiten?” – “Weil ich krank war”
「なぜ昨日仕事できなかった?」- 「病気だったから」

この“weil”“da”以外にも並列接続詞の“denn”や副詞の“nämlich”を使っても理由を説明できる。文法的に“denn”は並列接続詞であり普通文頭におかれる。また、語順において1語としてカウントされず、更に従属接続詞のように動詞が文末に来ることはない。一方の副詞“nämlich”は必ず動詞の直後に置かれる。つまり3番目の位置だ。

また意味的には両者とも“weil”“da”とは微妙なニュアンスの違いがあり、これは日本語に訳した方が分かりやすい。“denn”は「と言うのも~」という感じで、相手が知らなかった新しい情報を与えるというニュアンスがあり、“nämlich”は「つまり~」という、先行の文をより詳しく伝える意図が出てくる。

Ich konnte gestern nicht arbeiten. Denn ich war krank.
昨日は仕事できなかった。というのも病気だったからだ。

Ich konnte gestern nicht arbeiten. Ich war nämlich krank.
昨日は仕事できなかった。つまり私は病気だった。

更に、前置詞を使って理由を相手に伝える方法がある。これで最もポピュラーなのが“wegen”である。“wegen”は2格支配の前置詞であるが、最近ではしばしば3格が好んで使われる。どちらを使っても間違いではないが、一般的に2格は古風でエレガントな感じで、3格はフランクで口語的と言われる。また、“wegen”の畏まったバリエーションとして“aufgrund”がある。“aufgrund”は2格支配、或いはvon + 3格を伴う事もある。とは言え、使用頻度は圧倒的に“wegen”の方が高い。

Wegen (aufgrund) einer Krankheit konnte ich gestern nicht arbeiten.
病気の為昨日は仕事できなかった。

このほかにも、因果関係を説明する方法として副詞の“deshalb”, “deswegen”, “daher”, “darum”などがある。これらは先に理由となる事実を述べて、続いて結論を述べるときに利用される。この因果関係を説明する副詞は微妙なニュアンスの違いを含めてかなり多いが、上記に挙げた4つくらい覚えておけばほぼ問題ない。

Ich war krank. Deshalb (deswegen,daher,darum) konnte ich gestern nicht arbeiten.
私は病気だった。だから昨日仕事できなかった。

今回に挙げた例文は極めて単純明快なものであるが、今日あげた理由を述べる為の表現はあらゆる場面で非常に重要だ。そして、ドイツ人が論理的、或いは理屈っぽいと言われるのは、相手を納得、理解させるために常に理由を述べる姿勢にある。

もちろん、これらは時と場合によっては我々日本人の言うところの「屁理屈」或いは「言い訳」に当たる場合も多く、必ずしもそれで常にポジティブな印象を与えるとは限らない。しかし、仮にそうだとしても、何も理由を言わないよりは遥かにマシだと言っておきたい。何れにしても、例え小さなことでも何か決断した、或いは相手に何か迷惑、あるいは予定変更を強いた場合など、常にその理由を説明できるように理論武装しておくことは非常に重要なことであると考えている。

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