欧州委員会に存在する32ヶ国語をマスターした翻訳家の言語学習

以前32ヶ国語をマスターした語学の天才イオアニス・イコノモウ氏について書いたことがある。2014年の時点ではギリシャ出身のイコノモウ氏は欧州委員会に勤務する翻訳家であった。もしかしたら現在では更に多くの言語を習得しているかもしれないが、ひとまず再度当時の情報をもとに取り上げてみたい。

イコノモウはまず5才で英語を習得、続いて7才でドイツ語、10才でイタリア語、13才でロシア語、14才でスワヒリ語、16才でトルコ語、その後アラブ語…、少なくともEUの24ヶ国語のうち、21ヶ国語を既に習得した。更にイコノモウはラテン語、マヤ語、ゴート語、古代アイルランド語、古代イラン語などの既に今日では使用されていない言語を理解することができる。

そして、イコノモウは一体どのようにしてこれ程多くの外国語を習得できたのか、少し古い記事だったが、そのインタビューを呼んで非常に興味深かった。

それによると、イコノモウにとって言語は仕事などの為に猛勉強して習得するものではなく、その背後にある文明や文化、音楽、食事などに魅了されていくうちに、それぞれの言語に対する愛情が自然と生まれて、学習に繋がったとの事だ。Frankfurter Allgemeine “Der Allessprecher”(2009) からドイツ語でのインタビューを抜粋して翻訳してみる :

それぞれの国、文化、言語を全て、しかし本当に全てを知りたいと思わなければならない。言語とともに生活し、好奇心をもって、その言語を愛さなければならない。ポーランド語を学ぶならピロシキを作ることだ、ロシア語ならドストエフスキー、ペルシャ語なら古代詩、ハンガリー語なら民族音楽、ドイツ語なら“Weltspiegel”(ルポタージュ番組)を見る。

そして、その国の普通の人々が毎日見るようなテレビを視聴し、本を読み、宗教と共に暮らさなければならないとしている。イコノモウがウルドゥー語とヒンディー語を大学で学んでた頃はヒンディーの価値観に則って生活し18年間ベジタリアンだった。その後にペルシャ語を学んだ際にはイスラムに没頭し、スーフィー教徒になったそうだ。更にイコノモウはWelt誌”Der Mann, der 32 Sprachen fließend spricht” (2014)のインタビューでは以下のように述べている :

言語の習得は恋愛のようなもの、もし誰かが恋に落ちたとしたら、その人の全てを知りたいと思うだろう。その人の過去、両親、学校を訪ねたいのと同じように、自分にとって言語とは現在の形だけでなく、その過去を知ることにも意味がある。

そのようにして異文化に没頭することで、イコノモウは32ヵ国もの言語を習得した。つまり、簡単に言うと「好きこそものの上手なれ」という事になる。イコノモウはこれを常人離れしたレベルで実行したという事だろう。もちろん、イコノモウ自身に並外れた知性があったことは言うまでもない。一見すると我々凡人には不可能であり、理解できないようなエキセントリックだ。

それでも、このイコノモウの言葉からは参考になる部分はある。個人的な経験から言っても、語学の習得に関して言えば、「好きこそ物の上手なれ」の要素がかなり大きいと言える。

何故、自分がドイツ語などという一般から言えば役に立ちそうにない言語を未だに学習していると言えば、生活に必要なのももちろんあるが、それ以上にそれが好きであり楽しいからだ。毎朝ラジオで聞く政治パロディを理解したり、サッカーというスポーツのメカニズムに興味があるからだ。

また、言語の習得において、その言語が使用される文化圏に如何に入り込めるかは極めて重要である。文法や発音といった語学的なことだけでなく、その土地の文化、歴史などをを知ることは、異国の人間を理解するのに大きく役立つ。

例えば、私は語学の教材として聖書を大学の時に読んだ。私はこれを専ら語学的な研究に利用しており、当時はその内容など何の役にも立たないと思っていた。しかし、今思えばこの経験は大きかったと考えている。キリスト教を多少でも理解することは、ドイツ人を理解することのカギとなる。

仮にドイツ語を学ぶのであれば、まずはドイツと言う国について自らが興味を持てるテーマを探して、知識を深めたり、興味を持つことは良い事だと思っている。そして、多くの事は知れば知る程面白くなってくるので、それらは言語を学ぶまたとないモチベーションになることは、個人的な経験からも言っておきたい。

にほんブログ村 外国語ブログ ドイツ語へ