ホルスト・ゼーホーファー、遂に憲法擁護長長官マーセンを解任する

9月22日にドイツ連邦憲法擁護庁のトップであるハンス・ゲオルク・マーセンについての記事を書いた。簡単におさらいすれば、マーセンはドイツ国内の左翼や右翼によるテロを監視する諜報機関の長官であった。

しかしマーセンはケムニッツで発生した右翼による外国人襲撃の証拠映像を、理由もなく左翼による陰謀であると公に発言し、その見識と中立性に著しい疑問が投げかけられた。更にこの映像はやはり本物である事が確認され、国内の機密諜報機関のトップとして著しくその信頼を損ねてしまった。そう言う訳で、中道左派SPDや野党を中心に政権内でマーセンの解任を求める声が強くなっていた。

このような状況の中、内務相であり直属の上司でもあるホルスト・ゼーホーファーはマーセンを強く擁護し、政権はこれに妥協する形でマーセンを憲法擁護庁長官から国務長官へ逆に昇格させるという仰天人事を敢行した。しかし、当然の事ながらこの理不尽な人事に国民の多くが反発し、これを受けて再度マーセンの処遇が検討される所まで記述した筈だ。

そのマーセンであるが、さすがに世間の反発があまりにも大きかったことから昇格は取りやめになり、内務省の特別顧問、つまり同格のポストへの横滑りと言う形に収まった。これでマーセンの件は一件落着かに見えた。

しかし、この後マーセンは更なるスキャンダルを呼ぶ行為に及ぶことになる。マーセンは10月18日にワルシャワで行われたヨーロッパの国内諜報機関のトップが集まる会合において、自らの異動に伴う別れの辞を述べた。

そこでマーセンは、再びケムニッツでの外国人襲撃と自らの処遇について言及した。つまりケムニッツでの右翼による外国人襲撃と言う解釈は完全なでっち上げだと主張し、更に自らは左翼である政敵の陰謀により憲法擁護庁長官のポストを追われたと強調した。その辞を読む限り、以前の映像についての発言よりも、はっきりと親右翼的で左翼の陰謀を確信した発言だ。もはや失敗とか失言の域を超えた完全な確信犯的な内容と言える。

そしてこの発言を受けて、これまでマーセンを擁護し続けていた内務相のホルスト・ゼーホーファーは遂にマーセンを解任、強制的に退官させる決断を下した。ゼーホーファーはその主張を聞く限り、政権内でもかなり右よりの立場の人間であるが、そのゼーホーファーでさえマーセンの発言は”inakzeptabel”=「許容できない」そして、”menschlich enttäuscht”=「人間的にがっかりした」と述べた。

残念ながら、このマーセンの発言は誰がどう見てもその地位に相応しくないもので、解任も止むを得ない。ドイツの安全保障政策はナイーブで左翼的と言う自らの見識が正しい事に確信があったのかもしれないが、高位の公務員が公の場で陰謀説を述べるなど、にわかには信じがたい。その発言は誰がどう見ても一線を超えており、ゼーホーファーがマーセンに対し、人間的にもがっかりしたと言うのは当然だろう。

しかし、このマーセンの件で最もダメージを負ったのは、これまでマーセンはを擁護し続けてきた他ならぬゼーホーファーだ。元々ポピュリスト的な発言で著しく評価を落とし、バイエルン州議会選挙におけるCSU惨敗の要因ともなっていたゼーホーファーを内務相から解任すべきという国民の声は強い。メルケルがCDUの党首を退くことが決定した今、少なくともCSUの党首からゼーホーファーが退く可能性は高いと言える。ゼーホーファーはこれについて11月の中頃に決定するとしている。

一方のマーセンであるが、AfDから熱烈なラブコールが届いている模様だ。マーセン自身は長年のCDUの党員であるらしいが、その親右翼的、陰謀説を確信する発言を聞く限り、その居場所は間違いなくAfDだろう。

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