AfD議員の子供の入学を拒否して物議を醸している、ベルリンの私立小学校

ドイツの為の選択肢、AfDの名前は既に日本でも紹介されているだろう。いわゆる右派ポピュリスト系の政党であり、外国人、とりわけイスラム系に対する差別的な発言で知られている。このところやや勢いを失っている印象があるが、それでもドイツで平均すると15%程度の支持を保っており、とりわけ来年の秋州選挙が行われる旧東ドイツザクセン州では支持率25%というかなり強い勢力を維持している。今のところCDUが僅かにリードして第一党の立場を保っているが、下手をすればAfDが逆転してもおかしくない。

この下品で差別的な主義主張を掲げるAfDの躍進はドイツで昨今非常に問題視されており、同様の見解を私も持っている。現在の社会に問題があることは明らかだが、だからと言って人間を特定の民族や集団単位で貶めて問題は解決しない。むしろ問題が大きくなる。新たにCDUの党首になったクランプカレンバウアーにとっても、来年のザクセン州選挙でAfDを弱体化させることはCDUという政党の枠を越えたドイツにとって重要なミッションになるだろう。

しかし一方でこのAfDの差別に対して締め出しで対抗する組織団体も散見され、これはこれで問題視されている。つい最近ではベルリンのいわゆるシュタイナー学校と呼ばれる私立小学校が、親がAfDの議員であることを理由に子供の入学を拒否したことが明らかになり大きな物議を醸している。

この学校に通う子供は既に付属の幼稚園に通っており、本来ならばそのまま繰り上がりで小学校にも入学するべきだった。しかし、保護者や教員の一部がAfD議員である親の外国人差別的な世界観が教育や学校生活に悪影響を及ぼすとして、この子供を入学させることに懸念を表明していたとされる。もちろん、当のAfD党員の保護者は自らの政治信条と子供の件はきっぱり切り離すと学校側に訴えた。学校側でもこれに関しては意見がかなり割れ、相当議論された模様だが、最終的に学校側は子供が偏見を持たれた状態で入学するのは避けられないとして、入学拒否を決定した。

取り敢えずその経緯を聞く限り、これは苦渋の決断である事を窺わせる。ドイツのシュタイナー学校協会側もあくまでこの決定は該当するベルリンのシュタイナー学校単独で行われたものであり、ドイツのシュタイナー学校全体の教育方針とは全く関係がなく、人種民族、宗教や政治的な理由で他者を差別しない事を重要な教育コンセプトとして訴えている。

また、本来ならこの小学校も私立である以上、通常の公立小学校と教育方針、方法などが異なる事は当然であり、それに沿って入学者を選別することは全く問題はない。逆にそうでなければ私立学校の意義など存在しない。

とは言え、さすがに親の政治信条を理由に子供の入学を拒否するのは前代未聞である。100歩譲って親自身を締め出すならまだしも、本来何の関係もない子供が被害を受けるような形になるのだから問題視されるのは止むを得ない。これも黙っていれば、誰にも分からずに済んだんだろうが、おそらく子供が付属する幼稚園に普通に通っている状況だったので、理由を公にせざるを得なかったのかもしれない。或いはAfDに対する断固とした意志を示すために敢えてこの決断の経緯を表明したのか、それは分からない。

しかし、何れにしても相手がAfD議員だからと言ってこのような著しく理不尽かつ差別的な決定が公にまかり通っていることは実に懸念される社会情勢だといえる。昨年もサッカー、ブンデスリーガのアイントラハト・フランクフルトがAfDの支持者を会員から締め出す方針を明らかにして物議を醸した。これはもちろん、子供云々とは一切関係なく人種差別に対する断固とした態度として一部で絶賛されたが、そのような一方的な締め出し主義が社会に蔓延する差別や偏見を取り除くとは考えにくい。

なぜなら、AfDというのはそもそも自分たちが差別されていると訴えて支持を集めている政党だからだ。一方的に締め出せば、例によってますます差別されていると訴えて支持を集めるだろう。そしてその支持者たちの多くは人種差別主義者ではない。寧ろ既存の政党政治に不満を持っている人間が抗議の意味を込めてAfDに投票していると言われている。

ベルリンの学校に関しても、この拒否された子供はおそらく事情を知れば自分が差別されたと考えるだろうし、何よりAfDの議員である親がそのように言うだろう。そして、残念ながらそのように説明されても止むを得ない状況だといえる。皮肉にもAfDを敵対視し、除こうとすればするほど、その勢力は増すことになる。

因みに、過去にはハンブルクでもシュタイナー学校にNPDハンブルクのボスの子供が通っており物議を醸した事があるそうだ。NPDとはAfDのようなポピュリストの域を超えた完全な極右政党であり、いわゆるネオナチである。

この時学校側は長い間その事を知らず、この親が学校行事に訪問した時に初めて知ったそうだ。そして程なくして、この親は学校へ立ち入り禁止になった訳だが、多くの保護者の賛成により、子供はそのまま学校に通い続ける事になった。NPDは筋金入りの極右なので立ち入り禁止は止むを得ないとしても、このように少なくとも子供はまた別というのが本来ならば常識的な対応だろう。