ミュラー、フンメルス、ボアテング、唐突にドイツ代表での戦力外が発表される

一方残りの2名、フンメルスとミュラーに関してはこのタイミングでの戦力外発表はかなり意表を突かれた。直ぐにコメントを出したボアテングとは対照的に、両者ともやや時間をおいて落胆と怒りが感じられるコメントを出している。

まず70キャップを誇るCBフンメルスであるが、昨年あたりから年齢(30歳)からくる衰え、特にスピード不足が指摘されておりブンデスリーガでも昨年最も評価を落とした選手の一人として認知されていた。同じCBでもボアテングがひと昔前で言う屈強な「ストッパー」タイプであるのに対し、フンメルスは「リベロ」に近いタイプのCBだ。

つまり、フンメルスは対人守備はボアテングのように強くない。確かにタックルやブロックと言ったクラシックなCBとしての能力も低くは無いが、それはフンメルスの強みではない。フンメルスが優れているのは鋭い読みから前方へせり出し、高い位置でボールを奪取する能力に長けていることだ。逆に言えば非常に攻撃的でリスクの高い守備スタイルである。故に基本的にボアテングのような屈強で身体能力の高いパートナーを必要とした。守備だけならフンメルスは単なる「良い選手」だ。

しかし、フンメルスを特別にしているのがそのボール配給能力である。その類まれなパスセンスとキックの精度、多彩さで攻撃の起点としても機能し、これは私の目から見てドイツでは傑出していた。更にヘディングも比較的強くセットプレー時の貴重な得点源でもあった。得にドイツ代表ではレーヴがテクニカルな選手を好んで起用する為、サイドからのセットプレーで期待できるのはほぼフンメルスしかいなかった。

フンメルスはCBながら非常にオールラウンドな能力を兼ね備えた選手であり、FCバイエルンでもズューレのパートナーとしてはボアテングより適しているという事だろう。2週間前のチャンピオンズリーグ16強リバプール戦では、攻撃に色気を出さず守備に専念して見事なパフォーマンスを見せ、未だ世界のトップレベルで通用する事を証明したばかりだ。本人としては納得が行かないのも当然だろう。

そして、既に代表100キャップを誇るMFトーマス・ミュラーはまだ29歳、ドイツサッカーのレジェンドになれる可能性を秘めた選手だった。そのスペースを見つける希有な能力と冷静な決定力、判断力で既にW杯でも2010年、2014年合わせて10得点を挙げており、ミロスラフ・クローゼが持つW杯最多得点記録を塗り替える勢いだった。当然長年ドイツ代表の絶対的な得点源でもあり、一時レーヴが本職のFWを干してゼロトップに拘ったのは、このミュラーの決定力を信頼してのものだろう。

しかし、このミュラーの歯車が狂い始めたのが2016年だと言える。この年ミュラーはEURO2016で無得点に終わり、クラブでも新監督アンチェロッティが就任しベンチを温める日が多くなった。アンチェロッティの解任により幾分当初の輝きを取り戻したとは言え、長いスパンでみればそのパフォーマンスは明らかに下り坂になっている。昨年のW杯に至っては完全に蚊帳の外と言って良いほどの絶不調だった。

派手な技術や高い身体能力に頼らないそのクレバーなスタイルは本来なら年齢の影響を受けにくい選手だと私は認知していたが、ミュラーの場合、何が良いのか分かりにくい選手だけに、何が悪いかも分かりにくい。何れにしても、もはや不調というよりも力が落ちていると見る方が自然だ。

とはいえ、ミュラーのような得点力が高く、かつ予想しにくい動きをする選手は途中出場でもチームに十分貢献できる。現に依然としてFCバイエルンでもコンスタントに出場機会を得ており、トップレベルでそれなりに働いているのも事実だ。

また、ミュラーの場合、プレー以外でもう一つチームにもたらすであろうメリットがある。そのポジティブで明るいキャラクターはムードメーカーとして機能し得る点だ。おそらく同様の理由で、現ヴィッセル神戸のポドルスキは完全なベンチウォーマーでも代表に呼ばれ続けた。今後ミュラーにその役割が相応しいかは不明だが、その公での振る舞いを知る限り、決して的外れな指摘ではないだろう。

今回の戦力外発表に対してミュラーは珍しく、はっきりと納得のいかない旨のコメントを発表した。世間でも少なくともミュラーに関してはドアを開けておくべきだと言う声は大きい。