オランダ発フットボールカルチャー誌、パネンカ・マガジンを読んでみた

この間、日本のアマゾンで面白そうな電子書籍がないか探していたところ、興味深い雑誌を発見したので購入して読んでみた。オランダ発フットボールカルチャー誌、パネンカ・マガジンである。私はこれをスマホにダウンロードして外でベンチに座りながら読んだのだが、その内容もニッチでかなり興味深かった。この雑誌は日本の欧州サッカーファンにとって貴重な情報と知識を与えてくれる、これまでに無いサッカー情報誌であると思う。

この雑誌の名前になっているパネンカと言えば、1976年のEURO決勝、チェコスロバキア対西ドイツ戦で決めた伝説的なPKでドイツでも有名なサッカー界のレジェンドだ。

2-2の同点でPK戦までもつれたこの試合、パネンカはチェコスロバキアの勝利の懸かる5人目のキッカーとして登場した。そしてこの緊迫の場面、パネンカは西ドイツのGKゼップ・マイヤーをあざ笑うかのようなチップキックを中央に決めてチェコスロバキアのEURO優勝を決めた。この試合は後にも先にも旧西ドイツ、現在の統一ドイツ代表がPKで負けた唯一の試合であり、ドイツサッカー界にとって忘れる事のない苦い記憶として残っている。そしてこの時のキックは伝説となり、PKのバリエーションの一つとして「パネンカ」の名が冠されている。

そのような経緯を知っていたのもあり、このパネンカ・マガジンを試しにダウンロードして読んでみた次第だ。そして、このパネンカ・マガジンが他の日本語でのサッカー情報誌と一線を画しているのは、あくまで欧州における文化としてのサッカーにフォーカスしている点だ。

具体的に言えば、地域に根ざしたサッカーと人々の関わり合いや、チームの歴史、名選手の伝説などに関しての記事が主な内容だ。そして、そこから知るのできるファンの様子、スタジアムの造りや街の雰囲気、チームの栄枯盛衰、かつての名選手に纏わる逸話などはサッカーが文化として根付いている欧州ならではの趣がある。

また、この雑誌の中で貴重だと思われるのがその写真である。生き生きとしたファンや街の人々、寂れたスタジアム、クラブハウスの様子は欧州のサッカー文化を雄弁に物語っている。これらの写真を見れば、日本では報道されることのない欧州の裏のサッカーシーンを感じることができる。

私が読んだのは日本語版での創刊号のようだが、まずはチェコでのパネンカへのインタビューをはじめ、アイルランド、スコットランド、ドイツ、イタリア、ハンガリー、オランダ、スペインと言った広い地域をカバーしている。そしてその記事はすべて、オランダ人の編集長が自ら現地に赴き作成したものである事がわかる。個人的にはナポリでのルポルタージュがイタリア臭くて非常に好感がもてた。

日本でサッカー人気が高まったのは1993年のJリーグの発足及び、その年の日本代表のアメリカW杯予選での劇的な敗退である「ドーハの悲劇」がきっかけだと記憶している。それ以来、日本でスポーツとしてのサッカーの地位、人気は高まり続けて来ていると言って良い。現在では欧州トップリーグやチャンピオンズリーグ、スター選手の情報もあっという間に入ってくる。

パネンカ・マガジンはそれらの華やかな世界の傍らにある、その土地に根付き、世代を超えて人々に密着しているサッカーの貴重な情報や体験談を提供してくれる。そして、これらの普段スポットライトが当たらないサッカーの文化としての側面を知ることで、欧州各国リーグの観戦もより一層魅力的なものになるだろう。