ロシアW杯ドイツ惨敗の理由その2 : 真のリーダーの不在

サッカーに限らず、組織においてリーダーの存在は極めて重要である。いくらモチベーションが高く、優秀な個人が揃っていても、皆が人間である以上異なる考え方があって当たり前だ。一つの状況に対して幾つもの解答が存在する。それを一つの方向へ導き、かつ個々の能力を活かせるようにチームをまとめあげるのがリーダーである。とりわけ、サッカーにおいてピッチ上で監督がコントロール出来る部分は多くない。刻一刻と変化する状況において、リーダーを中心に選手たちは自分たちで解決を見つけなければならない。

こういった面において、本来ドイツは世界で最も優れたチームでもあった。それは、優れたリーダーが存在していたからだ。また、私の知る限り、ドイツ人はヒエラルキーを尊重する。言葉遣いや態度がフランクでも、ボスが右といえば右に、左といえば左に向く。それぞれが好き勝手な事をして、組織が崩壊するような事はない。

しかし、今回のドイツ代表はこの点において大きな問題を抱えていたと思わざるを得ない。とりわけメキシコ戦の失点のシーン、韓国戦の70分以降などは完全にオーガニゼーションが崩壊していた。過去のキャプテンであるミヒャエル・バラックは有無を言わさぬ強権を発動してチームメイトを一つの方向へ纏めた。フィリップ・ラームは責任を分担し、他の経験豊富な選手とコミュニケーションを取りながらチームを一つに纏めた。2人ともタイプは完全に異なるが、チームを逆境から立て直す強いリーダーシップを持った選手だった。

私の目から見れば、今回のドイツは明らかにそのような存在を欠いていた。もちろんマヌエル・ノイアーはキャプテンであり、それに相応しいサッカーの実力と経験、人間性を持っていただろう。しかし、ノイアーは怪我のために長らく代表を離れており、復帰したのは大会直前である。また、GKというポジションの特性上、試合において直接チーム全体を指揮する事は難しい。右SBのキャプテンあったフィリップ・ラームもバスティアン・シュヴァインシュタイガーにチームのコントロールを事実上委任した。

本来ならば、実力も実績もあり、経験も豊富な2014年の優勝メンバーがそのような役割を担うべきだった。質の高いコミュニケーションと決断力があるなら、それは必ずしも一人である必要ではない。最近は責任を分担した比較的フラットな組織がドイツでも流行りでもある。

しかし、メキシコ戦の後、リーダー格の選手でもあるフンメルスとケディラが口論になったと言う報道がある。これは、もしかしたら単なる下らないゴシップかもしれないが、私はこの2人が互いを非難する争いをしてチームが分裂していたとしても全く驚かない。

フンメルスはメキシコ戦の後のインタビューで、カウンターへの備えも無しに無謀な攻めを繰り返したチームを批判し、更に、チーム内で既にこの問題を提起していたのに、このようにプレーをする事が理解出来ないと言う旨のコメントをした。これは確かに的を得ているかもしれないが、当のフンメルスが失点場面で楔のパスに釣りだされるという言い訳の余地のないミスをしている。おそらく、試合中から余程頭にきており、ヤケくそで前方に飛び出してしまったのだろう。しかし、自分のミスを棚に上げてチームメイトを公の電波で批判するのはリーダー格の選手のする事ではない。

更にミュラーは殆どシュートさえ打てず、ボアテングもスウェーデン戦では完全に冷静さを失い退場した。ケディラはそのボールロストの多さで今大会ドイツ選手中でもワーストの評価である。エジルなどはそもそも大会前に代表選手として疑わしい行為でチーム及び国内の雰囲気を著しく損ねた。

唯一トニ・クロースはスウェーデン戦での奇跡のゴールで、ドイツの新しいリーダーの誕生を予感させる仕事をした。またポジション、実力、実績から言ってもチームをコントロールするのに最適な選手である事は間違いない。しかし、そのクロースも韓国戦で崩壊した組織を立て直す事は出来なかった。クロース自身の出来もトータルで見れば、スウェーデン戦での失点の原因となった決定的なパスミスに、3試合を通じてその緩い守備など、決して良かった訳ではない。

また、チーム内は2014年の優勝組と2017年のコンフェデ杯の優勝組の間に大きな溝があったと報道されている。これもどこまで本当か知らないが、振り返れば3月のブラジル戦、クロースが試合後に若手選手を敢えて公に批判した。私はこれでチーム内が締まったかと思ったが、これは今思えば単にチームが纏まっていない印だったかもしれない。レロイ・サネの落選の時も、フンメルスが若手選手に対して苦言を呈するようなインタビューで若干物議を醸した。

結局、レーヴがほぼ不可能とも思われていたノイアーの復帰に拘ったのは、チーム内に真のリーダーとなるに相応しい存在を欠いている事を考慮したのかもしれない。しかし、やはり間に合わせでチームを一つにまとめる事は不可能だった。この影響は予想以上に大きかったと今となっては思わざるを得ない。