ドイツの国益を損ねているDeutsche Bürokratie (ドイツ的官僚制)の弊害

最近ぼちぼち去年の確定申告を始めた。最近はオンラインでできるようになったから、若干楽になったとは言え煩雑な作業である事には変わりはない。確定申告が面倒かつその処理が厳格なのは多分先進国ならどこの国でも同じだろうが、この確定申告に代表されるような厳格な書面による手続きはしばしば”Deutsche Bürokratie”(ドイツ的官僚制)などと言われ揶揄されている。この言葉はドイツ語を勉強したことがある方々、あるいはドイツに住んでいる方々は聞いたことがあるかもしれない。

Bürokratie=「官僚制」とは私なりに解釈すると、必要以上に厳格かつ煩雑な法律による支配と、それに盲目的に従う役人の仕事である。特に役人の柔軟性の無さは時々あり得ないレベルに達して様々な所で害をもたらしているのではないか。

確か5年位前だったと思うが、ある著名な日本人バイオリニストが高価なバイオリンをドイツでのコンサートの為に日本から持参したところ、空港の税関は持参者の申請に不備があるとして、バイオリンを没収し100万ユーロの税金の支払いを要求した上に脱税の容疑をかけた。普通の人間ならこれはドッキリだと思うだろうが、こんな悪い冗談みたいな事が本当に起こるのがドイツだ。

これは最終的にわざわざドイツの財務相ショイブレが税関に指示を出してバイオリンは持参者に返却されたが、税関は逆に激怒しショイブレを訴えると鼻息を荒くして自分たちの仕事の正当性を主張するという頑固さを誇示した。

しかし、税関の目も節穴ではないし人を見て話せば悪気がない事ぐらい分かってたはずだ。そんな人にちょっとの罰金はともかく最終的に100万ユーロの消費税を払わせるというのは政治的に不可能であることぐらい察して対応するべきだろう。

このように理屈でのみ物事を考え、政治能力ゼロの役人が権限を持っているからタチが悪い。この感性と柔軟性の無さは私から言わせれば酷いレベルだ。

更に絶望的になったのが去年の12月に起こったベルリンのクリスマスマーケットに大型トラックが突っ込んだ事件である。この犯人は言って見れば札付きの危険人物として役所の間では有名で、本来は出身国に送還されるべきだった。しかし、この人物は国籍を証明する書類を持っていなかった為、法律上強制送還する事が出来ずドイツに留まり犯行に及ぶ事になる。

当然のことながら今になって何で強制送還出来なかったのか散々追求されているが、役人は例によって法律上無理だったとの説明を行なった。しかし、国民の安全を守るという本来の目的を忘れて、法律上の形式的な手続きに拘った結果どんな大惨事になったか今更いうまでも無い。少なくとも私はこの時ほど自分の住む国家が無力で頼りないと思った事は無い。

もちろん役人の仕事は法律に則ったものでなければならないし、それを頑なに守ることは基本的に正しい。世界には無法地帯みたいな所は山ほどあり、ドイツ人もドイツが法治国家であることに少なからず誇りを持っている筈だ。

しかし、当然ながら法律も完璧では無い上に、そこに穴が見つかったらまた次の新しい法律でその穴をカバーしようとするから、人間性の育たない冷徹な社会になっている。

この余りにも行き過ぎた法律とルールの支配はドイツらしいと言えばそれまでだし、多くのことがそれで笑い話にもなる。しかし、冗談抜きで国益を損なっていることも多々あると個人的には考えている。