ひとまず危機を脱したものの、盤石には程遠いFCバイエルン

今日はUEFAチャンピオンズリーグ(以下CL)FCバイエルン対PSVアイントホーフェン戦が行われた。順当に考えればバイエルンの勝利が予想されるところだが、ここ最近のまるでパッとしない彼らパフォーマンスを考えればこの勝負は案外わからない。PSVはオランダのチャンピオンなのだ。

バイエルンはCLの前節でアトレティコ・マドリーに完敗したのち、ブンデスリーガで格下のケルンと引き分け、これはダイジェストで見る限り負けてもおかしくない試合だった。更に続く試合でははこれまた格下のフランクフルトに引き分けた。この試合フランクフルトが後半退場者を出したにも関わらず試合終盤に同点に追いつかれるという稚拙な試合運びで勝ち点を落としている。

国内では結果でだけでなく内容でも圧倒して勝利するのが当たり前だったバイエルンがここまでパフォーマンスを落としたことは近年にはない事であり、メディアが騒ぐのも無理はない。そして選手や監督などのネガティヴなコメントを聞けば調子が悪いことは明白だ。そう言う意味で今日のPSV戦は結果のみならず内容も問われる注目の試合となった。

試合は始まるとバイエルンは開始早々からギア全開でここ最近の批判を跳ね返すと言わんばかりの怒涛の攻めを繰り出してきた。ポジションを変えながら2列目から飛び出してくるミュラーに両サイドバックが高い位置で絡む多彩な攻撃でPSVはどう見ても大混乱に陥り、バイエルンはチャンスの山を築き上げる。

守っては中盤の高い位置からの強力なプレスでPSVにまともに攻める隙すら与えず完全に試合を支配することに成功した。あっという間に2点が入り更なるゴールラッシュが期待されるような試合内容だったが、さすがに序盤の飛ばし過ぎが効いたのか、前半の終わり頃になると集中力が散漫になる場面が散見されるようになる。するとカウンターからこの日最初のシュートをPSVに決められて1点を返される。その前にも誤審でオフサイドに判定されたがゴールを割られた場面もあり、後半に向けてやや不安の残る終わり方となった。

後半になると前半から一転攻勢に転じてきたPSVは一進一退の攻防から決定的なチャンスを得るが、ノイアーのスーパーセーブでこれを凌ぎ、これをきっかけにバイエルンが再び盛り返した。すると60分ごろにロッベンのシュートの跳ね返った所をレバンドフスキが押し込みリードを広げることに成功する。ここからはバイエルンが試合をコントロールし、結局その後更に1点を加えて4-1で勝利した。

試合全体から見ればPSVがさすがに弱かったことを差し引いて考える必要があるとしても、バイエルンはこの勝利でひとまず世間からの批判を黙らせることに成功したと言える。とりあえず一番一息つけるのは監督のアンチェロッティであろう。前任者のグアルディオラと何かとそのスタイルの違いを比較されながら、結果も内容も芳しくないここ最近の状況は彼にとっては特に不快だったに違いない。彼は不甲斐ない内容で引き分けたフランクフルト戦後「何かを変える必要がある」と明言したが、少なくとも今日のバイエルンからは勝利に対する意思は伝わってきた。これはポジティブに評価して良い。

しかしながら、相手の数少ない攻めの機会から決定的なチャンスを許していることには不安が残る。今日も一歩間違えれば後半の序盤に同点に追いつかれた可能性があるし、見る限りバイエルンは全く盤石ではない。隙の無さや安定感という点ではアトレティコに現時点では全然及ばないだろう。

アンチェロッティはレアルを率いてた時に恐ろしく堅実な守備から選手個人の能力を活かした得点効率の良いチームを作り上げCLを制したが、彼はバイエルンに同じものをもたらす事が出来るだろうか。おそらくバイエルンはレアルほど強力な個を揃えたチームではないから、組織的なサッカーを成熟させることによってチーム力を選手個人の力の総和以上に上げて行くことも求められる。CLを制すことにかけては右に出るものはいないと言われるアンチェロッティだが、そう簡単にレアルの時と同じようにはいかないだろう。