ストライキで飛行機が欠航した場合、利用客にはどんな権利が存在するのか

更に飛行機が欠航や遅延の際には、当然ながら利用客が空港で長時間待機するケースが出てくる。そして航空会社はこの時間利用客を助ける義務がある。具体的には、飛行機での移動距離が1500キロメートル以内で、2時間以上の待ち時間が発生した場合、航空会社は食事、飲み物、電話、場合によってはホテルを用意しなければならない。

移動距離が1500から3500キロメートルの場合は3時間以上、3500キロメートル以上の場合は、4時間以上の待ち時間が発生した場合、同様のサポートを航空会社は利用客に提供する義務がある。見ての通り、移動距離が長くなればなる程、サポートを受けられるまでの待ち時間は長くなる。

もっとも、ストライキの際には航空会社も人員不足でこのようなサポートに手が回らない可能性がある。その場合は取り敢えず自力で食べ物などを調達したり、場合によってはホテルをブッキングするなどし、領収証をとっておくべきだ。そしてこのコストは後ほど金額を問わず航空会社に請求できる。詰まる所、ストライキに限らず理由が何であれ、欠航や遅延で利用客が空港で長時間待たされる場合、航空会社は利用客を助けなければならない。

上記のような利用客の権利と言うのは、ドイツ語で言う”EU-Fluggastrechteverordnung”という条例で定められている。要するにEUにおける航空利用客の権利を定めた条例であるので、このルールは航空会社の国を問わずEU域内で適用され、EU圏内からEU圏外への飛行も同様だ。但し、EU圏外からEU圏内の飛行の場合は、航空会社の国はEU加盟国でなければならない。

もちろん、これらのトラブルは当然のことながらルールに則って処理されるべきなのだが、飛行機関連となると金額もそれなりに高くなる上に、必ずしもルール上で明確に判断できない部分も出てくるので、裁判になった例も多くある。例えば、2016年の10月にTUIフライ航空で大量の従業員が仮病を使い職務を放棄するという、いわゆる「山猫ストライキ」が発生し大量の便が欠航、遅延した。山猫ストライキとは組合の承認を受けずに強行されるストライキであり、ドイツ語では”Wilder Streik”と呼ばれる。

TUIフライはこれをいわゆる「予測不可能かつ制御不能な異常事態」として補償を拒否していたが、昨年のEU裁判所でこれは制御可能と判決され、TUIフライは万単位の利用客に補償をせねばならなくなった。これ以後、似たような事例は同様な判決が下されると見られている。

何れにしても利用客として重要なのは、基本的なルールをおさえた上で、すべての証拠を保管しておくことだろう。これは当たり前に聞こえるが、案外蔑ろにされることが多い。少なくともドイツに関して言えば、証拠がなければ何を言ってもムダと言って良いほど冷徹に処理される。これは如何なるトラブルでも同じだ。

また、航空会社にとって利用客はもちろん大事だが、このようなトラブルの事例では航空会社は絶対に金を払いたくないという事実は、同様に当たり前でも肝に銘じておく必要がある。少なくともこのようなケースでは日本語で言ういわゆる「忖度」というものは存在せず、間違いなく航空会社は如何なる屁理屈を利用してでも支払いを逃れる口実を作る。基本的な事はしっかりと理論武装をしておくことが、最終的に自分の身を守ることに繋がると認識している。