かなり遅くなってしまったが、9月1日にザクセン州とブランデンブルク州の州議会選挙が行れたので、感想を記しておきたい。今年はこの2州にテューリンゲン州を加えた合計3つの旧東ドイツの州で選挙が行われ、非常に注目されていた。テーマは言うまでもなく、昨今世界で幅を効かせている右派ポピュリスト政党AfD vs 既存の民主主義政党である。
というのも、旧東ドイツの地域は特にAfDの勢力が強い事で知られており、一時その勢いはもはやCDUやSPDといった国民政党を上回る程になった。ドイツは好調な経済の裏腹に旧東と旧西の格差、政治的分断は決定的な情勢となっていた。
そしてまずAfDの牙城とも言えるザクセンの結果だが、CDUの32,5%に対し、AfDは27,5%にとどまった。CDUにとってこの結果は歴史上最低の得票率である。対してAfDは4年前の前回より17,7%も増加させたため、AfDの大勝利とも言える。
しかし、一方で選挙前の情勢から言えばAfDが思ったほど伸びず、最終的にはCDUがザクセン州の最大勢力に踏み止まった。この結果CDUのザクセン州首相、ミヒャエル・クレッチマーの手腕が寧ろ高く評価されるに至った。
クレッチマーはAfDに対し融和的ではなく、はっきりとした対決姿勢を鮮明にして反AfD層からの票を確保した。つまり、直接AfDの支持層から票を奪った訳ではない。これに対しては評価が分かれるところかもしれないが、ザクセンという右翼勢力が極めて強い地域でCDUを没落から防いだ事は評価に値するだろう。この結果、ザクセンはCDU(黒)、SPD(赤)、Grüne(緑)の3党によるケニア連立が組まれる公算である。
一方のブランデンブルクはSPD26,2%、AfDが23,5%となり、こちらもSPDが僅差でAfDを上回り第一党の座を確保した。ブランデンブルクAfDの代表アンドレアス・カルビッツはAfDの中でも極めて右翼的との評価でネオナチ勢力とも繋がりがあるとされる曰く付きの人物でもある。
しかし、ブランデンブルクSPD代表ヴォイドケも徹底して反AfD路線を貫いたことが功を奏し、何とかAfDの最大勢力化を阻むことに成功した。連立政権はザクセン同様ケニア連立になるか、SPD、Linke、Grüneの赤赤緑連立になる模様だ。
ザクセン、ブランデンブルク両州とも今回は60%を超える投票率を記録し、非常に高い関心を集めた事がわかる。具体的には、現状に強い不満を持ちAfDに投票する有権者が増えた一方で、そのAfDの躍進を止めようと投票所に向かった有権者も増えたと思われる。つまり、まさにAfDか、アンチAfDがテーマになった選挙でもあった。
他の政党に目を向ければ、Grüneが昨今のトレンド同様躍進したが、それは小幅なもので、旧西ドイツ都市部ほどの伸びは見られなかった。また、これまで旧東ドイツで存在感を放っていたLinke(左翼党)が大幅に議席を失った。現状に不満を持つ抗議政党の地位はLinkeからAfDつまり、左翼から右翼に移った感がある。
今回は何とかAfDの勢いを食い止めたが、これはあくまでも元々存在したアンチAfD勢力を総動員したものであり、旧東ドイツ市民の不満が根本的に解決されたものでは全くない。多くの旧東ドイツ市民は旧西ドイツに比べて冷遇されていると感じており、これを解決しない限り今後もAfDは強大な勢力を保ち続けるだろう。10月の末にはテューリンゲン州の選挙が控えている。