昨日アルディに食料品の買い物に行ってきた。平日だが相変わらず狭い店内に人が溢れており、決して快適な購買体験ではないのだが、その品物はとにかく安い。アルディはこの低価格を実現する為にありとあらゆるコスト削減を徹底して行っているのは有名な話だが、その中でも我々利用客にとって象徴的なのが、その驚異的なレジ処理能力の高さである。アルディのレジに並べば、行列ができていてもあっという間に順番が回ってくる。そして、あっという間ににその処理も終わる。
少し古いが、2009年の調査によると、アルディで1回あたりのレジ処理にかかる時間はおよそ20〜25秒だとの事だ。これは同業種の中では当然ダントツの首位であった。更にアルディでレジを打ちを長年務める従業員のインタビューによると、彼女は1時間におよそ3400〜3500品もの数をレジでスキャンするそうだ。これはほぼ1秒に1品スキャンしている事になる。
さすがにこれは誇張しているとも思えるが、何れにしてもアルディのレジ処理は驚異的に速い事は間違いなく、世界で最も速いと言われている。実際にアルディはこの点を徹底しており、イギリスでレジ処理が遅いと言う理由で従業員を解雇しメディアに取り上げられた。これに対しアルディはこの低価格を実現する為には、可能な限り効率的に仕事する以外に無いと答えている。
もちろん、だからと言ってアルディは単に厳しい要求で従業員をこき使う訳では無い。レジ係が利用する椅子、机、機械などは出来るだけ快適に仕事が出来るようにエルゴミクスを意識した配置、システムが設計されている。また、スキャンミスを防ぐ為に自社ブランドのバーコードは特別に大きなものにしているのに加え、スキャナーも高精度なものを利用しており、折れ曲がったり切れたバーコードも読み取れるようにしている。
更にはレジ台は極めてコンパクトに作られており、その側面はカートがはめ込める形になっている。これでスキャンを終えた商品はすぐさまカートに流し込めるので、支払いが終わればあっという間に客は立ち去る。最近はスマホでも支払いが出来るようになった事で、更にレジ処理のスピードは上がった。
また、最近では世界的にレジのセルフサービスも拡大しつつあるが、アルディはこの点でももちろん抜かりがない。既にアルディは上海にまで進出しており、そこでは”scan and go”というシステムを利用している。これはつまり、商品を陳列棚から手に取った時点で自らのスマホでスキャンできるサービスで、そもそもレジに並ぶ必要がない。このサービスを私は使った事がないので詳しくは知らないが、アルディは確実に最も効率のよいシステムを構築するだろう。
もちろん、このアルディの徹底した速さと効率を志向したスタイルには批判もある。やはり多少余計にお金を払ったとしても、店員の愛想とか、高級感のあるサービスを消費者は一方でも求めている事は明らかだ。だからこそアルディはイメージチェンジの為に数年前に全店舗の改装に踏み切った。しかし、アルディはあくまでその徹底した効率の良さと、そこから生み出せる低価格化で世界にまで進出している。
そして、このアルディの徹底して効率とスピードを求める姿勢は、私は苦労や手間暇かけた仕事を美徳とする日本人が知って損はないと考えている。例えば今回挙げたレジ処理をとっても、日本では店員が立って行うのが一般的だ。確かに私は日本でバイトしていた頃、お客様が立っているのだから、店員も立っているべきだと教わった記憶がある。それも一種の礼儀であり、そう言う考え方自体は否定はしない。
しかし、もしも最近問題になっている日本人の労働生産性の低さやサービス残業、有給取得率の低さを改善したければ、労働におけるそのような非効率な慣習や価値観は大いに見直す必要があるだろう。もっとも、それは世間が許さないだろうから簡単な事ではないだろうが、日本でもレジ処理くらいは座って行うシステムが一般化すればと思っている。