アーミン・ラシェット、突如脚光を浴び始めたドイツの次期首相候補

振り返れば前回2017年の連邦議会選挙、本来ならばCDU、Grüne、FDPのジャマイカ連立が組まれる手筈だった。ところがFDP党首であるクリスティアン・リンドナーが突如交渉打ち切り宣言をしたため頓挫したという経緯がある。このような事態は次回の選挙でも十分考えられるので、政治勢力図が分散している現在、ラシェットの手腕は非常に重宝され得る。

このようなラシェットを次期首相候補として高く評価する発言が、前回CDUとの連立を頓挫させたFDPの副党首クビキから出た事は注目に値するだろう。また、FDPはその政治方針から言っても経済重視の政党であり、彼らにとっては本来経済のエキスパートでもあるメルツが首相の座に就いてくれた方が都合が良い。その意味もあってかクビキの発言は多くのメディアに取り上げられた。

更にラシェットに有利な点として挙げられているのが、既にノルトライン・ヴェストファーレン州の首相として実績を挙げている点であり、更に現在の首相であるメルケルからの支持が期待される事だろう。この点はザールランドの首相から党首となり、今回辞任に追い込まれたクランプカレンバウアーと同様だ。

しかし、クランプカレンバウアーが挫折した要因はその実績や政治方針よりも、寧ろリーダーとしての個人の資質に依る所が大きく、ラシェットが必ずしも同じ轍を踏むとは限らない。また、ノルトライン・ヴェストファーレン州はドイツで最も人口の多い州であり、ザールランドより遥かに規模が大きい。ラシェットなら現在最大のライバルでもあるGrüneの支持層からも票を奪える可能性も出てくる。

一方、ラシェットが党首になった場合、AfDへの支持層から再び票を奪い返すのは依然として難しいものになる。この点は明らかな右派であるメルツが圧倒的に有利だ。つまり、現在AfDに蹂躙されてカオスに陥っている旧東ドイツ地域の情勢を改善させるとすれば、メルツの方が相応しいと言えるだろう。

また、肝心のラシェット自身に党首選に出馬する意向があるかは依然として不明だ。ラシェットはこれまで党の重鎮ながら常に控えめな立場を取っており、前回クランプカレンバウアーとメルツ、シュパーンが争った党首選にも出馬しなかった。大きなチャンスがあると見られている今回も今のところ出馬に関しては今の所完全に煙に巻いている。

しかし、逆に言えばラシェットは周りの状況を慎重に見極めながら、天の時をじっと待っているのかもしれない。そうで有れば、確実に近い将来ラシェットは満を辞してCDUの党首、つまりドイツの次期首相候補に名乗り出るだろう。現在は完全に支持率でメルツの影に隠れているが、前回の党首選のクランプカレンバウアー同様、最終的にラシェットはかなりの支持を取り付けるのではないか。

そして肝心の党首選であるが、当初の予定なら今年の末の党大会で行われる予定だったが、前倒しとなり夏頃に行われる可能性が浮上してきている。今後のドイツの行末を含めて、目が離せない展開になってきている事は間違いない。