ドイツを震撼させている、オーストリア極右副首相の政治スキャンダル

今年最大の政治イベントの一つでもある欧州議会選挙のドイツでの投票が明日に迫っているが、その1週間前に隣国のオーストリアで前代未聞の政治スキャンダルが発覚した。今週のドイツはこの話題一色である。

これは、オーストリアの極右政党であるFPÖ(自由党)の党首であり、同国の副首相でもあるシュトラッヘが、スペインのイビサ島の別荘で自称ロシア財閥の姪と称する女性と不正な利益供与を談合し、その様子が隠し撮りされ公開された事件である。

この談合の隠し撮りビデオは2017年の夏、オーストリア総選挙の直前に行われたもので、誰が何の目的行ったかは分かっていないが、これを手に入れたドイツの南ドイツ新聞とシュピーゲル誌が先週共同で公開したものだ。このような汚職問題自体は何処でも存在するかもしれないが、その談合の様子がこのような明確な形で我々一般人が目にする事態は例がなく、極めて生々しいと言える。その様子はまるで映画のワンシーンだ。

まず、このビデオで目にするのは少々酔っ払った副首相シュトラッヘと自由党の政治家であるグデヌス、そして自称ロシア財閥の姪と思しき若い金髪の女性である。グデヌスの夫人も画面には映っていないが同席していた模様だ。グデヌスはロシア語に堪能らしく通訳を行った。

重要な場面だけを切り取った南ドイツ新聞の解説つきのビデオを私は見たが、そこではまず、オーストリアの大衆紙であるクローネン紙をこのロシア人女性が買収し、自由党に有利になるような世論操作を行うという話が出る。クローネン紙はおそらくドイツで言うビルト紙に当たるタブロイド紙であり、シュトラッヘはこの話に明らかな興味を示し食いついた。国内最大の大衆紙が選挙直前に世論操作を行えば、その効果は絶大となる。

シュトラッヘはもしも話通りにクローネ紙が買収されれば、FPÖに批判的なジャーナリストをクビにして、シンパを新たに雇うとし、更には自由党に批判的なオーストリア公共放送ORFを改編するというプランを述べた。要するにメディアの言論統制である。

当然、この見返りをこのロシア人女性はシュトラッヘから要求する訳だが、シュトラッヘは、このロシア人女性が企業を設立する事を提案し、そうなれば現在シュトラバーグというオーストリアの巨大企業が受注しているオーストリアの公共事業を全てそちらに回すプランを述べた。

因みにこのシュトラバーグという企業にはシュトラッヘの政敵であるハーゼルシュタイナーと言う元政治家が出資している。シュトラッヘは自由党が政権に就いた場合、ハーゼルシュタイナーに公共事業は渡さないと露骨な敵意を示した。

更にオーストリアの会計検査院の目を誤魔化す為に、表向きに公共の利益とな組織を設立し、ここを通して大量のヤミ献金を受け取るというプランも語っている。

この後実際にFPÖは政権入りし、シュトラッヘも副首相の地位まで上り詰めたが、この隠し撮りビデオで語られたプランが実行に移されたかは定かではない。また、これは誰かがシュトラッヘを罠にハメた事は確実で、まあ同じ人間としては同情の余地はある。当然、このビデオを公開した南ドイツ新聞とシュピーゲル誌には批判の声もある。

しかし、今回の場合は明らかに公共の利益が個人のプライバシーを上回るケースであるため、公開する事自体は違法にはならない。当然ながら、このビデオは既に綿密に検査され、本物である事が確認されている。

何れにしても、このような人物が副首相の地位まで登り詰めるのは、世の中何か間違っていると言わざるを得ないだろう。当然のことながら、シュトラッヘは副首相を辞任し、首相のクルツは連立政権を組んでいたFPÖの閣僚を全て罷免した。オーストリアは今回の事件で民主主義国家としての威厳を著しく損ねた事は間違いない。再選挙は9月に行われる模様だ。

そして、当然ながら首相のクルツも極右政党と連立政権を組んだ責任は問われる事になる。政治に限らず、誰をパートナーとして仕事をしているかは自らの評価に著しく関わってくる。

そう言う意味では、ドイツでFPÖのマブダチ的な存在でもあるAfDへの影響は少なからずあるだろう。両政党は同じ極右系として仲睦まじい事で知られており、AfDはシュトラッヘの行為を過ちだとしながらも、引き続きFPÖとのパートナー関係を続けて行くことを明確にしている。このスキャンダルが明日の欧州議会選挙でドイツの有権者の投票にどのように影響が出るか、注目されるところだろう。