アウトバーン、全区間での時速制限導入が議論される

2週間程度前の話になるが、ドイツ環境保護クラブのトップがアウトバーンに時速120キロの制限を設けるべきだと発言し物議を醸した。それによるとドイツはこの時速制限の導入で最大年間500万トンの二酸化炭素の排出を削減することが出来るとの事だ。

昨今ドイツではこの二酸化炭素排出量の削減は大きなテーマと化しており、昨年以来緑の党が急激に躍進している理由の一つでもあるだろう。そして、この議論に関しては国民の意見は賛成派と反対派がほぼ50%ずつ真っ二つに分かれ、議論は感情的な意見も混じりかなり過熱した。

まず事実から言えば、知っての通りドイツの高速道路である「アウトバーン」では既におよそ全体の3割程度の区間に時速制限がある。残りのおよそ7割の区間は一応時速130キロが推奨されているものの、拘束力のある時速制限は存在しない。私も通常混んでいなければクルーズ機能をセットし時速140-150キロ程度で走行するが、その私の左を爆速で追い抜いていく車が幾つも存在する。

これらの猛スピードで走るドライバーは俗に”Raser”と呼ばれており、一般にはネガティブな意味で使われる。このスピードがどの程度かは特定できないが、時速200-250キロだと推定される。ネットで調べた限り100キロ制限の道路を時速291キロで走行し警察に摘発されたドライバーが存在した。

これらの猛スピードの車に加え、大型トラックが時速80-100キロで走っていれば、当然に追い越しに伴う急加速、急ブレーキ、そして渋滞、つまり大量のアイドリングが発生し環境に悪くなる。しかし、更に問題なのは、当然のことながら安全が損なわれる点だ。交通事故を起こすなど考えたくもないが、それが時速200キロで起これば重大事故になるのは当たり前だ。

交通相のアンドレアス・ショイアーはアウトバーンは世界で最も安全な高速道路などとのたまっていたが、アウトバーンを走行していれば一体何台もの事故車と救急車両を見るか、その数は日本などとは比較にもならない。

そしてこのような危険極まりない走行の大部分が許されるのは、先進国ではドイツだけである。それどころか世界で高速道路の全区間に時速制限を設けていないのはソマリアとかアフガニスタンといった、お世辞にも見習いたいとは思えない国々に限られる。

ショイアーは政府で密かに検討されていたとされる時速130キロ制限の設置について、”gegen jeden Menschenverstand”=「完全に常識に反する」と断固とした反対姿勢を示したが、世界を見渡せば常識外れなのはドイツである。

そして警察組合の代表は南ドイツ新聞のインタビューに次のように答えて、明確にアウトバーンの時速制限の導入に賛成の意を示した。