緑の党首相候補ベアボック、格安航空便を廃止する意向を示す

最近のARD(ドイツ第一放送)のアンケートによるとGrüne(緑の党)が現在の与党最大勢力であるCDU/CSUを1ポイント差で上回る下剋上の状態となっている。この状況が9月の総選挙まで続くかどうかは分からないが、もしも今年の夏が再び猛暑になろうものなら緑の党がCDU/CSU連合の議席を上回る歴史的な結果が現実になるかもしれない。

仮にそうなれば、ドイツの新たな首相はその緑の党党首であり首相候補でもあるアンナレーナ・ベアボックとなる可能性が高いわけで、ここからベアボックが選挙に向けて世間にどのような発言をしていくのか非常に注目される状況でもある。ベアボックは女性で元トランポリンの選手という爽やかさも加わってか現在圧倒的な人気を誇っているのだが、昨日物議を醸す発言が早速出た。

ベアボックはドイツの大衆紙であるBILDのインタビューにおいて、自らが首相になった暁には、短距離航空便を廃止する意向を述べたのである。ここで言う短距離航空便とは、日本でLCCと呼ばれる格安航空便だと思って間違いない。

格安航空便はヨーロッパの空の便で完全に定着しており、数年前迄はますます増える勢いだった。ルフトハンザなども次々と子会社である格安航空会社ユーロウィングスに便を移管しようと企て、ルフトハンザ・パイロットの大規模ストライキがあった事は私もよく覚えている。また、私の知る限りヨーロッパでこの格安航空便が広まった結果、日本でもLCCが普及したと記憶している、。

しかし、この格安航空便も今となっては地球温暖化を促進する最大の悪玉としてやり玉に上がっている。理由は言うまでもなく、飛行機から排出される二酸化炭素である。知っての通り、飛行機から排出される二酸化炭素の量は電車に比べて圧倒的に多く、少なくとも7倍と言われている。また仮にミュンヘンからベルリンに電車で移動した場合、飛行機で移動するより80%も二酸化炭素の排出を抑制出来るとされる。

まあいきなり格安航空便を禁止する事などあり得ないのだが、間違いなく言えるのは、今後は飛行機は高くなり、電車での移動が国から援助され促進される。現在の問題は環境に悪い飛行機が安い一方で、環境に優しい鉄道が高く、更にサービスも悪い事である。この状況は一刻も早く改善されて然るべきだろう。飛行機、とりわけ格安航空便の縮小はもはや避けられない。

ベアボックのこの発言にはそ当然各方面から批判が噴出しており、おそらくその人気は若干落ちる。もともと緑の党は環境の為なら何でも禁止する「禁止政党」と揶揄されていた時期がある。一方で環境政党だけに、地球温暖化問題に関して妥協を許すような発言は出来ない為、緑の党が現在の人気を保つのは簡単な事ではないだろう。

いずれにしてもパンデミックの出口が見えつつある現在、ドイツの最大の政治テーマは再び地球温暖化問題になる事は間違いない。我々の生活にも直接関わってくる可能性もあるだけに、首相候補でもあるベアボックの発言には非常に注目している。