現在のコロナ禍で最も被害を被った業界のひとつに、自動車業界が挙げられるだろう。ロックダウンが緩和されても部品の調達が世界的に困難になっている為、満足に生産ができない状態という訳だ。3月の新車の登録台数は前年同時期の38%減で、4月の数字は間違いなくもっと厳しくなる。
しかしそもそも、このコロナ禍を抜きにしても環境対策からドイツは社会の脱クルマ化に舵を切っており、長期的に見ても私ら一般市民にとって車はどんどん使い難くなっている。一部の都市でディーゼルを締め出したり、アウトバーンの時速制限や有料化などが議論されるのがそれを現しているだろう。この度は車の利用における罰則が大幅に強化されたので、その一部を紹介する。
スピード違反 : 市街地で時速21キロ以上オーバーした場合80ユーロの罰金が課され、違反ポイント1点が加算、そして早くも1ヶ月免停となる。それまでは31キロ以上だったので、10キロも厳しくなった。違反ポイントは8点に達すると免許没収となる。
ドイツでは通常市街地はふつう時速制限は50キロなのだが、学校の近くや騒音防止の為に30キロとなる場合がある。この表示をうっかり見落として50キロ前後で走行したら早くも免停を喰らう可能性があると言うことだ。私もついこの間これでオービスに引っかかり若干だが罰金を払う羽目になった。
因みに、アウトバーンなどの郊外の場合は市街地よりも若干甘めになっているが、こちらも早くも26キロオーバーで同様の罰則となる。これまでは41キロオーバーだったので、15キロも厳しくなった。更にオービスを探知するアプリを利用した場合、75ユーロの罰金が課される上に、こちらも違反ポイントが加算される。
駐車違反の取締り : 身体障害者用や消防車の出入り口に駐車場に車を停めた場合の罰金が35ユーロから55ユーロに上昇する。更に新たに電気自動車用、カーシェアリング用の駐車場への駐車違反も55ユーロの罰金となる。見通しの悪いカーブや交差点に停めた場合の罰金も15から35ユーロに上昇する。
更にこの駐車違反により実際に誰かを危険に晒したり、消防車をブロックしてしまった場合、金額は更に100ユーロ程度に上昇する。まあこれは運なのでうっかり違反してしまったら注意しようがないが、知っておくべきだろう。
自転車や歩行者の保護 : これまで自転車道に車は3分間一時停止できたが、これは今後禁止となり罰金55ユーロが課される。駐車が認められていない歩道に停めても同様の罰金が課される。あまりにも悪質な場合はこれも最大100ユーロになる。
また、これまでは車が自転車を追い越す際には「十分な距離」をとることが義務付けられていたが、これが市街なら1,5メートル、郊外なら2メートルと厳格に定められた。どうやって取り締まるのか不明だが、こうしたハッキリとした基準をドイツ人は好む。
因みに、日本では歩道を自転車で走る事があるがドイツではまず無い。つまり、自転車は自転車道がない限り普通の道路を走るので、かなり危険である。同様にアルコールを摂取して自転車に乗れば罰則があるので注意されたい。
救急車両通行路の不正利用 : この救急車両通行路はドイツ語で”Rettungsgasse”と呼ばれており、一度記事を書いた事がある。ドライバーは渋滞時には傍に寄ることで、救急車両が通れる道を作らなければならないが、ここで空けた道を追い越しに利用する非道な輩が残念ながら存在する。
これを取り締まるルールはこれまで意外にも存在しなかったが、この度罰金320ユーロ、違反ポイント2点に加え免停という罰則が定められた。これまでは渋滞時に傍に寄らず、救急車両の通行を妨害した場合のみ200ユーロの罰金だった。
この他にも極めて多くの罰則が強化されており、全体的には歩行者、自転車などの弱者を守る為の改定となっている。暫くしたら警察の連中は大々的な取り締まりキャンペーンを行い、罰金を集めるべく姑息なオービスをそこら中に仕掛けるだろう。罰金はもちろんの事、下手をすればあっという間に免許没収になるので注意する必要がある。没収は違反ポイントたった8だ。
もっとも、これまでドイツでは自動車の利用は優遇されており、罰則も周辺諸国に比べれば大幅に緩かった。私自身も脱クルマ化には賛成で、是非市街地から自動車を出来るだけ排除する安全な街づくりを進めて頂きたい。ドイツの基幹産業であるだけに抵抗は大きいだろうが、公共交通機関が手軽に利用でき、歩行者が中心で人間的かつ落ち着きのある街が個人的には好ましく思っている。