AfDの中でも筋金入りの極右と呼ばれる政治家、ビィエルン・ヘッケ

確かに、インタビューの内容は明らかにヘッケをヒトラーになぞらえるなど一部挑発的なもので、押し問答のような感もある。しかし、ヘッケが実際に発した、社会的に極めて物議を醸す発言について、本人から説明を求めるのは別にアンフェアでも何でもない。事前にどんな話をしたのか知らないが、質問の内容が自分たちが想像したものでない、或いは準備できないという理由で、インタビューをやり直しを求めるなど、あり得ない。

最終的には、インタビューをこのままの内容で継続するか、ここで打ち切りにするかという議論となり、結局打ち切りとなった。しかし、この打ち切りの際にヘッケはインタビュアーに、しっかりと報復措置を取る事をほのめかす発言を残した。インタビュアーがそれが具体的に何かを質問した所、ヘッケは自らが今後ドイツの政界で重要な人物に登り詰める可能性を示唆して立ち去った。

また、AfDのスポークスマンはこのインタビューは使用しない事を要請したが、ZDFのインタビュアーは「もちろんこのインタビューは使う」と返事をし、実際にこれはネットで、しかもノーカットで公開されている。

このインタビューでAfDの政策は全く触れる事が無いまま打ち切られた事は残念だったとは言え、図らずもAfDの政党としてのアンチ・プロフェッショナル的な姿勢が明らかになったと言えるだろう。また、ビィエルン・ヘッケという人物に若干ながら触れられたのは非常に興味深かった。

私の中でヘッケはこれまで過激な極右政治家というレッテルが一人歩きしていたが、今回のインタビューを聞く限りはヘッケは、日本で言ういわゆる「歴史修正主義者」的な印象を受けた。

例えば他にもヘッケは「ヒトラーが完全な悪として扱われているのは大きな問題である。歴史においては完全な白黒がない事は誰でも知っている」と述べた事がある。この意見に賛同する日本人は案外多いのではないだろうか。しかし、現代のドイツではこれで既に極右、反社会的と認知される。

実際に、ヘッケは政治家になる以前はギムナジウムで歴史の教員だった。本人曰く、生徒や保護者、同僚から非常に高く評価された教員だったとの事だ。そして元生徒の証言などを読む限り、これは単なる自慢などではなく、実際に評判の悪い教員ではなかったらしい。確かに一部のテーマについて、かなり偏った世界観を持っていたのは明らかだったそうだが、授業内容はすこぶる好評な上に人間的にも親切で生徒たちの間でも人気があったとの事だ。

更にヘッケは歴史のほかにも体育を教えており、学校には毎朝およそ10kmも森の中を自転車で通っていた。現在でもドイツ人の中年にしては珍しく、スリムな体型を維持している。

打ち切りとなったインタビューでも、実はヘッケは質問に対して苛立ちを見せながらも、”gerne”と返事し、答える意思を見せていた。AfDのスポークスマンが茶々を入れなければ、そのままインタビューは続いていたかもしれない。数々の物議を醸す発言で極右政治家とのレッテルを貼られながら、テューリンゲン州のAfD代表まで登り詰めたのは、それなりの理由があると言う事だろう。

もっとも、ヘッケのような人物が民衆の支持を集めているのは、それは非常に懸念される事態であると言える。この人物の全貌はまだ明らかではないが、その発言内容を見れば、実際にかなりナチスに傾倒した、人種差別的思想が垣間見える。10月末のテューリンゲン州議会選挙の結果が注目される。