ドイツ州議会選挙 : 更に躍進した緑の党と惨敗したCDU

ドイツにとって2021年は今後の行く末を決定する需要な選挙が目白押しである。まずは先の日曜日、南西のバーデン・ヴュルテンベルク州と西端のラインランド・プファルツ州の州議会選挙が行われた。9月に行われる連邦議会総選挙の結果を占う意味でも非常に注目された選挙であるが、結果は以下のようになった。

バーデン・ヴュルテンベルク州:

Grüne:32,6(+2,3)
CDU:24,1(-2,9)
SPD:11,0(-1,7)
FDP:10,5(+2,2)
AfD:9,7(-5,0)

バーデン・ヴュルテンベルクは緑の党とCDU両者の争いと見られていたが、緑の党が完全勝利という形になった。これは緑の党の首相であるクレッチュマンの仕事が非常に高く評価されたのが大きい。もともと緑の党とCDUの連立政権だったが、CDUが弱体化した事によって新たな政権は緑の党、SPD、FDPの3党による連立政権の芽が出てきた。

ラインランド・プファルツ州:
SPD:35,7(-0,5)
CDU:27,7(-4,1)
Grüne:9,3(+4,0)
AfD:8,3(-4,3)
FDP:5,5(-0,7)

ラインランド・プファルツはSPDとCDUの争いと見られていたが、SPDが最大勢力を維持しCDUが惨敗した。こちらもSPDの首相であるドライヤーの人気が非常に高かった事が功を奏したと言われる。一方、緑の党はここでも議席を大幅に伸ばす事に成功した。前期に引き続きSPD、緑の党、FDPの連立政権が継続される見込みである。

総じて言えば、緑の党の勝利、CDUの惨敗とまとめられる。ポピュリスト政党AfDは化けの皮が剥がれつつある。

今回CDUにとって痛かったのは、この選挙の直前で連邦議会議員のマスク・スキャンダルが判明した事だろう。すなわち、議員の2名がコロナ禍のマスク着用義務にかこつけて取引を仲介し、数十万ユーロの金を荒稼ぎした事が判明した事である。これには与野党問わず皆がおかんむりで、当然ながらこの2名は議員を辞職した。

最近はこのようなスキャンダルが選挙前になると必ずと言って良い程出てくるが、コロナ禍で国民が苦しんでいる中、国会議員がパンデミックを利用して金を稼ぐなど卑劣にも程がある。当然の報いと言えるだろう。

更にここに来て国民のコロナ政策に対する不満が高まっているのも大きい。特にワクチン接種が全くの期待外れで、おまけにここに来てコロナの新規感染者数は再び増加傾向に転じている。

とりわけ、健康相のイェンス・シュパーン(CDU)は11月に自身が新型コロナに感染したが、この感染が判明する前日に会食を行っていた事が判明し痛烈な批判に晒された。国民にはマスクだの、ソーシャル・ディスタンスなど言っておきながら、自らはパーティに参加とは立つ瀬がない。日本でも似たような話があった筈だ。

CDUは現在は連邦議会で姉妹政党CSUと共に最大与党だが、仮に9月の総選挙でも惨敗するような事があれば、AfDとともに野党に回る可能性が出てくる。コロナ禍の無難なマネジメントで大きな波乱が無いと思われていた政局だったが、ここに来て連邦議会選挙でも波乱を予感させる両州の結果だったと言える。

そして、これは当然ドイツの新首相が誰になるかという点でも影響がある。CDU党首ラシェットか、CSU党首ゼーダーか、まずは両者のどちらが公式に首相候補として擁立されるか非常に注目が集まる。ただし国民の人気では圧倒的にゼーダーがラシェットをリードしている事に加え、今回の惨敗でラシェットが首相候補となるとCDU/CSUは連邦議会選挙も危うい雰囲気が出てきた。ゼーダーが首相になる確率がやや高まったのではないか。

一方、今回の結果で史上初の首相誕生の芽が出つつある緑の党もアンナレーナ・ベアボックとロベルト・ハベック2頭体制である。緑の党も近いうちに両者の何れかを公式に首相候補として擁立しなければならないが、最近の報道ではどうやらベアボックが首相候補となりそうだ。