CL16強 : 限界を露呈し、リバプールに完敗したFCバイエルン

昨日は注目のCL16強、FCバイエルンvsリバプールを観戦した。この試合の注目度は極めて高く、ペイTVのSkyはオンライン観戦用のチケット申し込みは試合開始1時間前までという異例の制限を発表した。

実際に私も1stレグでは試合開始30分前ごろにチケットを申し込んだが、既にサーバーがパンクしており前半終了間際からの観戦になると言う辛酸を舐めた。しかし、両チーム無得点の引き分けながら見応え十分の試合であり、雌雄を決する2ndレグが更に白熱した試合になると言う期待は否が応にも高まっていた。

そして、この大一番を前にFCバイエルンは一気に調子を上げてきた。1stレグ直後のブンデスリーガではボルシアMGを5-1、ヴォルフスブルクを6-0で下し、遂にドルトムントを捉えて首位に躍り出た。とりわけ3位の難敵ボルシアMGに完勝したのは大きい。

ミュラー、フンメルス、ボアテングのドイツ代表戦力外通告は寝耳に水だったが、当初は勝つのは難しいと思われたリバプールを倒せる期待を抱かせるには十分だった。0-0で迎えたホームの2ndレグに小細工は要らない。真っ向勝負で勝利するのみだ。

試合が始まるとやはり雌雄を決する一発勝負だけあって両チームともリスクを冒さない慎重な立ち上がりを見せた。ボールを保持しパスを回しながら様子を窺うバイエルンに対して、リバプールは守備を固めてからカウンターを狙う。序盤はややバイエルンが優勢ながら、リバプールは20分あたりからその攻めを掌握して徐々に盛り返した。一つのミスが勝敗を決する神経戦の様相だ。しかし、先にミスを犯したのはバイエルンだった。

リバプールは前線やや左に位置するマネにシンプルなロングボールを送る。これを見張っていたラフィーニャのポジショニングは極めて悪く、ペナルティエリア外枠付近であっさりとかわされる。しかし、更に問題だったのはGKノイアーが無謀な飛び出しでボールを奪おうと試み、これもかわされて無人のゴールにボールを流し込まれた。ノイアーが飛び出さなければズューレがヘルプに来れる位置にいただけに、これは悔やまれるGKのミスとなった。

その後は当然バイエルンが同点に追いつくべく攻め込み、左サイドに張り付くリベリーの1対1に活路を見出そうとする。しかし、リベリーの突破は全盛期からは程遠く、相手の脅威になるどころかバイエルンの攻撃を停滞させている感がある。リバプールはモハメド・サラーも自陣深くへ戻って守備に参加し、全くバイエルンにチャンスを与えない。

しかし39分、バイエルンは素早いリスタートからニャブリが右サイドを突破し、そのクロスがマティプのオウンゴールを誘発し同点に追いついた。ボールを保持し試合を慎重にコントロールするバイエルンに対し、リバプールも明らかに守備を重視した前半だった。全体的にみればほぼ互角の展開で1-1で終了した。

後半に入ると、前半守備を固めていたリバプールが徐々に攻めに転じるようになり、ボールを支配する時間が増えてくる。60分にバイエルンは再び右サイドニャブリの突破から良いクロスが入るが、全体的にはリバプール優勢の様相を呈してきた。

そして、遂に69分にリバプールは勝ち越しに成功する。右サイドからのコーナーキックをファン・ダイクが驚異的な跳躍力でヘディングを決めた。フンメルスとマルティネスの2人を制しての完璧なコースへのヘディングだ。これにはぐうの音も出ない。

崖っぷちに立たされたバイエルンはマルティネスに代えてゴレツカ、ハメスに代えてレナト・サンチェスを投入し賭けにでるが、これでかえってバランスを崩したバイエルンは逆襲を喰らう場面が多くなる。そして84分には追加点を奪われて万事休した。バイエルンがCL16強で姿を消すのは8年ぶりになる。

全体的にみれば、まさに両チームががっぷり四つに組んだ力勝負であり、これをリバプールが横綱相撲で寄り切った感のある試合だった。鉄壁の守備で1stレグを無失点で切り抜けたバイエルンだったが、勝利の為に攻守の総合力を問われたこの試合では残念ながら現在のチームの限界を露呈する形となった。監督のニコ・コバチも完敗を認めるざるを得ない力負けだったと言える。

特にリバプールの鉄壁の守備陣に対して、バイエルンは全くと言って良いほど打開策を見つける事が出来なかった。昨日一体レヴァンドフスキは何処にいたのか、殆ど完璧に抑え込まれたと言って良いだろう。リベリーのドリブルは全くの脅威とはならず、むしろ攻撃を停滞させた。トップ下ハメスは全く決定的なパスは出せず、チアゴはテクニックこそ高いが、昨日はむしろ守備で精いっぱい。強いて言うならばニャブリは単発で脅威になっていたかもしれないが、詰まるところ、選手個々の能力でリバプールはバイエルンの上を行く。

とりわけ、昨日レヴァンドフスキを完璧に抑え込み、更に化け物みたいなヘディングで決勝点を決めたファン・ダイクは現在世界最高のCBの触れ込み通りの実力を見せた。この選手が1stレグで出場停止だったのはバイエルンにとってラッキー以外の何物でもなかった。

更にチームとして圧倒的な差があったのがスピードだ。リバプールの寄せの速さ、判断の速さ、攻守の切り替えの速さ、これらあらゆる面の「スピード」でリバプールはバイエルンを完全に凌駕していた。そしてこれはそのままプレミアリーグとブンデスリーガの差だと言えるだろう。

今年のCL16強はまさにプレミアリーグvsブンデスリーガの対決となったが、終わってみればすべてプレミア勢が勝利し、ブンデス勢は全滅した。残念ながら、これはあまりにも順当な結果と言わざるを得ない。シャルケに至ってはマンチェスター・シティ相手に0-7と言う歴史的惨敗を喫した。勝ち目が無いことは分かっていたが、サッカーのスコアではない。その差はあまりにも大きい。

何れにせよ、私にとっての今年のCLは終了した。ドイツサッカーが再びヨーロッパで存在感を出すためには、新たな道を模索しなければならないだろう。