世間は新型コロナウィルスで物騒になってきたが、先週、先々週でチャンピオンズリーグ16強が予定通り行われている。振り返れば昨シーズン、ブンデスリーガ勢は16強で何れのチームもプレミアリーグ勢と激突し見事に撃沈された。今年はどうか。久しぶりにFCバイエルンの試合を観戦したので感想を記しておきたい。相手はチェルシーである。
チェルシーと言えば思い出されるのが、2012年のCL決勝である。この決勝戦は地元ミュンヘン、アリアンツ・アレーナで行われ、FCバイエルンも決勝に進出し、この時の対戦相手がチェルシーだった。史上初の地元決勝でCLを制覇すると言う夢のような状況にミュンヘンはお祭り騒ぎとなった。
しかし、与し易しと思われたチェルシーを相手に焦るバイエルンはPKを含む決定的チャンスをことごとく外し大苦戦を強いられ、そして最後はPK戦で敗れるという辛酸を舐めている。当時ファンの落胆は大きかった。
話を現在に戻せば、FCバイエルンは今シーズンも前半戦は例によって冴えず監督交代の荒療治も行ったが、今年に入り調子を上げておりブンデスリーガ首位の座を保っている。一方のチェルシーは現在プレミアリーグ4位である。もっとも、今シーズンのプレミアはユルゲン・クロップ率いるリバプールの独走状態なので、2位以下の成績は芳しくない。1stレグはアウェイだが、勝利が期待できる相手でもある。
まず、前半は一進一退の攻防で両チームにチャンスが訪れる互角の展開だった。バイエルンはボールこそ支配するが、時折チェルシーの前線からのプレスに引っかかり逆襲を喰らう。
試合が動いたのは51分、バイタルエリア中央でボールを受けたニャブリがすかさずPA内に走り込んだレヴァンドフスキにボールを預け、自らもPA内に走り込み、レヴァンドフスキからの折り返しをゴール正面ペナルティスポット辺りから決めた。ここでは、ニャブリをチェックに行ったチェルシーDFクリステンセンが滑ってしまいチェルシーには不運だったと言える。
これで同点に追いつくべくホームのチェルシーはやや前がかりになったが、逆にそのスペースをついてバイエルンは54分に追加点をあげる。これもピッチ中央やや左サイドでボールを受けたニャブリからレヴァンドフスキと素早く繋ぎ、最後は再びニャブリが左足でゴール右隅に流し込んだ。
試合はここからは完全なバイエルンペースとなる。チェルシーの攻撃は迫力も無ければ工夫もなく、バイエルンは易々とボールを奪い返す。バイエルンは更に74分、左サイドを圧倒的なスピードで切り裂いたデービスが中央に走り込んだレヴァンドフスキにアシストし3–0とする。これで勝負あった。
アウェイながら終わってみればシュート数で16対9、ボール支配率も63%に及び、数字だけみれば、バイエルンの完勝と言える試合だったと言える。
新戦力として右サイドバックに定着したフランス代表パヴァール、更には19歳で左サイドバックのレギュラーに定着したデービスもこの日は及第点の働きを見せており、チームにフィットしている事を窺わせた。ボアテングも衰えたと言われるが、ひとまずベテランらしく安定感のある仕事を見せた。
また、昨日は直接得点に絡んだニャブリやレヴァンドフスキの影に隠れたが、トップ下で先発したミュラーもその神出鬼没さで随所にチャンスに絡んでおり、攻撃のアクセントとなった。ミュラーは高レベルな組織サッカーでのみ活きる選手であり、新監督のハンス=ディーター・フリックの下で復活しつつある印象を受けた。
前半はほぼ互角の展開でノイアーの好セーブに救われる場面も散見され、過大評価は禁物だが、新戦力、ベテランがチームにフィットし、各々の仕事を堅実にこなしている印象を持った。総じて見ても、新監督フリックの仕事はここまで悪くないのではないか。今後に期待を持たせる出来だったと言って良い。
因みに、昨年は16強で全敗したブンデスリーガ勢だが、今年はドルトムント、RBライプツィヒの両者も1stレグを勝利で飾っており、8強進出に向けて良いスタートを切った。ブンデスリーガのレベル低下が叫ばれて久しいが、今年は何とか意地を見せて欲しいところだ。