CL8強 : FCバイエルン、FCバルセロナに歴史的大勝を飾る

昨日はコロナモードのチャンピオンズリーグ8強、FCバイエルンvsFCバルセロナが行われた。既に前日にはRBライプツィヒがアトレティコ・マドリ―を破る番狂わせで4強に進出している。通常モードのホーム&アウェイの方式であれば、最終的に実力の勝るチームがほぼ勝ち進むが、コロナモードということで一発勝負、つまり何が起こるか分からない。事前の予想ではバイエルン有利の声も聴かれるが、腐ってもバルサである。

バイエルンは負傷で欠場するパヴァールに代えて、本来中盤の底であるキミッヒを右サイドバックに配置し、その中盤の底にはチアゴをスタメンに起用した。また、左ウィングにはこの日スタメンが予想されたコマンではなく、ペリジッチを起用した。バルサは概ねメッシ、スアレス、ブスケツ、ピケなどのお馴染みのメンバーだが、グリーズマン、ラキティッチといった大物がベンチである。

試合が始まるといきなり両チームとも積極的に仕掛ける。4分にバイエルンは左サイド、ペリジッチの速いクロスを中央でミュラーがダイレクトのワンツーで処理し左足で先制した。一方のバルセロナも直後に左サイドを突破したジョルディ・アルバのクロスがアラバのオウンゴールを誘発し同点に追いつく。

この後はいったんバルセロナのペースになる。バイエルンは特に左サイド、デービスの守備が穴場となり9分はスアレスがノイアーと1対1になる大ピンチを迎える。更にその直後にはメッシのクロスを僅かに逸らせたブスケツのヘディングがポストに当たった。

しかし勝ち越したのはバイエルン。相手陣内高い位置でボールを奪ったニャブリは左サイドのペリジッチに間髪入れずパスを送り、これをペリジッチは直接ゴールに蹴り込み2-1とした。そしてここからバイエルンはバルセロナのパスワークを高い位置で寸断し完全にペースを握る。28分にはゴレツカのパスからニャブリがレングレを振り切って3点目を決めた。

これで集中力の切れた感があるバルセロナにバイエルンは容赦なく前線からプレッシャーをかけ、立て続けにチャンスを得る。31分には右サイド、キミッヒのクロスにミュラーが飛び込み4-1とする。前半で戦意を喪失した相手に畳みかけるそのシーンは2014年W杯のドイツ対ブラジル戦(7-1)を思い出させる。前半はこのまま4-1で終了した。

後半一矢を報いたいバルセロナはグリーズマンを投入するが、バイエルンペースは変わらない。53分にバイエルンは5点目のゴールネットを揺らすがこれはオフサイド。ただし、徐々にバイエルンにも気の緩みからか雑なプレーが増えてきた。バルセロナは57分、ペナルティエリア付近中央でボールを受けたスアレスがボアテングを交わして左足でゴールを決め、差を再び2点とする。これで再び若干であるが試合に緊張感が帯びてきた。

しかし63分、バイエルンは左サイド、デービスが無謀とも言える「一人攻め」を仕掛けるが、これをバルセロナは全く止めることができずタッチライン付近まで独走を許す。このデービスからのマイナスのラストパスをキミッヒがゴール正面から決めて5-2とする。これで完全に勝負あった。

ここからは完全に崩壊したバルセロナの守備を容赦なくバイエルンが攻め続け、終了までに更に3ゴールを決めて最終スコアを8-2とした。バルセロナはチャンピオンズリーグ直近31試合で負けたのはたったの2回である。負けるのさえ珍しいのに、8失点で敗れるなど誰が想像しただろうか。メッシ、ピケ、ブスケツ、アルバなどの一時代を築いた名手たちがここまで完膚なきまでに叩きのめされる姿には少々心が痛む。バイエルン陣内も相手への配慮からか控えめな喜びとなった。

まず、バルセロナについての印象を述べておけば、相変わらずそのテクニック、パスワークに関しては他チームの追随を許さない特別なものがある。昨日も序盤は一瞬の隙をついてバイエルン守備陣の裏を取り続けた。同点の時点でスアレス、ブスケツのビッグチャンスを決めていれば、少なくともここまで一方的な展開にはならなかっただろう。

しかし、主力選手が高齢化しているのもあるだろうが、走力、運動量、1対1の強さなどで明らかにバイエルンに凌駕された。特に守備の緩さはこのレベルでは見られた代物ではなく、余りにもお粗末に過ぎるだろう。前半でバイエルンに圧倒され、集中力が早めに切れてしまったのは残念という他ない。これは無観客試合であったことも多少は影響しているだろうが、何れにしてもバルセロナは一時代が終わったと言える。

一方のバイエルンであるが、昨日の試合の当たりは、大方の予想を覆して左ウィングで先発したペリジッチだろう。ペリジッチはコマンよりスピードで劣るが、ドリブル突破に特化したコマンよりも守備力が高く、よりシンプルにフィニッシュまで持ってくる。先制点の見事なクロスに加え、2点目の思い切りのよいシュートでバイエルンを勝利に導く重要な仕事をした。

もう一つ、この試合の前にドイツで注目されていたのがノイアーとテア・シュテーゲンのドイツ人GK対決である。世界トップの両者のどちらがドイツNr1GKであるかはここ数年議論になっているが、前代未聞の8失点を喫したテア・シュテーゲンにとっては余りにも厳しすぎる結果となった。

もっとも、これらの失点はテア・シュテーゲンの責任というよりは、前方の壊滅的な守備陣に依るものであることは議論の余地がないだろう。寧ろ目立ったのは、珍しくビルドアップでのパスミスが多かった事だ。その一部はバイエルンのゲーゲンプレスに引っ掛かり決定的チャンスまで持ち込まれた。いずれにしてもこの結果を受けて、ドイツのGK論争は一旦は落ち着くだろう。

これでバイエルンは水曜日に今日行われるリヨンvsマンチェスター・シティの勝者と準決勝で対戦するが、個人的にはグァルディオラ率いるシティとの対決が見たい。シティは既にレアルを蹴落として勝ち上がって来ており、バイエルンと拮抗した好勝負を見せてくれるだろう。

因みに、昨日の試合を私はペイTV、SKYの1日券を買って観戦したが、昨年の9,99€から値上がりして14,99€だった。プレミアムコンテンツとは言えさすがにネットライブの1日券で1800円もするのは高い。コロナ禍で各国リーグが中断しておりペイTVも苦慮しているのは分かるが、もう少し敷居を低くしてもらいたいところだ。