CL4強 : FCバイエルン、守備に不安を見せながらも決勝進出を決める

火曜日には既にパリSGがRBライプツィヒに完勝しCL決勝進出を決めた。昨日はもうひとつの準決勝、FCバイエルンvsオリンピック・リヨンの試合を観戦した。8強でバルセロナに歴史的大勝を飾ったバイエルンはもはやCL優勝候補筆頭の評価を揺ぎ無いものとしている。

一方のリヨンと言えば2000年代初めに群雄割拠のフランスで7連覇を果たした名門で、当時はCLでも大きな存在感を発揮したと記憶している。しかし、今期はフランスリーグ7位であり、戦前の予想ではバイエルン有利は動かない。8強ではバイエルンに次ぐ優勝候補と言われたマンチェスター・シティを番狂わせで破っている。

リヨンのプランは明確だ。しっかりと守備ブロックを固め縦に速いカウンターでゴールを陥れる、格上を一発勝負で倒すためのクラシックな戦術だ。バイエルンにとっては前回のバルセロナとは正反対のスタイルと相まみえる事になる。リヨンの前線には昨年オランダ代表としてドイツに煮え湯を飲ませてきたメンフィス・デパイが待ち構える。

そして試合が始まれば、まさにバイエルンが恐れていた展開が繰り広げられた。ボールを保持するが攻めあぐねるバイエルンに対し、リヨンは鋭いカウンターでバイエルンゴールを脅かした。いきなり4分にカウンターからデパイがノイアーと1対1になったのを皮切りに、13分にもゴール前数的不利からボアテングが決死のタックルでリヨンの決定的チャンスを防ぐ。17分にはバイエルンは左サイドで独走を許し大ピンチを迎えるが、シュートはポストに当たり事なきを得た。

しかしこの直後、右サイドでキミッヒの長いパスを受けたニャブリは迷いなくドリブルで中央へ切り込み、左足で弾丸シュートをゴール左上隅に決めてバイエルンが先制した。寄せに来るリヨンの守備陣を物ともせず、トップスピードから完璧な強さ、精度のシュートはまさにワールドクラスの素晴らしいゴールだ。ここでは巧みに中央へスペースを作る動きをしたミュラーも秀逸だった。

その後はバイエルンが完全にペースを掴み、ボールをキープしながら試合をコントロールする。自らボールを保持して攻めてくるリヨンの攻撃に怖さはさほど感じない。バイエルンは33分に再びニャブリが決勝進出に大きく近づく追加点を上げる。

後半もバイエルンはボールを保持しながら試合をコントロールする事を試みるが、徐々に集中力を欠いたプレーが散見されるようになり、リヨンの高い位置のプレスに引っかかる場面が増えてきた。リヨンは58分に再び決定的チャンスを得るが、ノイアーの好セーブでここでも事なきを得る。しかし70分を過ぎた頃からリヨンにも疲れが見えはじめ、徐々にバイエルンの勝利は動かない雰囲気となってくる。最終的にバイエルンはレヴァンドフスキが88分に追加点を上げて3-0とし、勝利を決定づけた。

バイエルンはボール保持率(66:34)、シュート数(19:9)、1対1(54:46)と各種スタッツでリヨンを凌駕しており、終わってみれば順当な勝利に見える。しかし、この試合のポイントとなったのはやはり要所での選手個々の強さ、そしてその決定力だろう。序盤に3度の決定的チャンスを得ながら得点できなかったリヨンに対し、バイエルンはニャブリの一発に救われた感もある。また、要所の大ピンチを全て切り抜けて無失点に抑えたノイアーは称賛されるべきだろう。

また、バイエルンの守備ラインは非常に高いが、総じてみても昨日はチャンスを与えすぎだ。ボアテング、アラバの両センターバックの出来が悪いとは思わない、寧ろ良くやっている方だろう。しかし、右サイドのキミッヒはやはりパヴァールに比べればかなり攻撃的なタイプであり、左サイドのデービスも守備の安定感という面ではかなりの疑問符が付く。

いずれにしても、決勝戦で同様の高い守備ラインを堅持する事は極めて危険だ。少なくとも、過去2試合で不安を見せている前半および後半の序盤に関してはより注意深く試合に入る必要がある。ネイマール、ディ・マリア、ムバッペなどに同様のチャンスを与えれば無失点で切り抜けることは不可能だ。

もっとも、不安を見せる守備陣に比べれば、バイエルンの攻撃は破壊力抜群であることは言うまでもない。昨日のニャブリのゴールには本当に恐れ入った。私はこのニャブリはもはや世界屈指のアタッカーの一人として高く評価しているが、この選手の素晴らしいところは、そのスピード、テクニック、決定力もさることながら、非常にクレバーかつ勇敢、更には守備力も非常に高い事にある。その総合力はバイエルンで一時代を築いたロッベン、リベリーを上回る現代的なウィングの選手と言えるだろう。