火曜日にチャンピオンズリーグ第2節FCバイエルン対トッテナムの試合がロンドンで行われたので、その感想を記しておきたい。トッテナムは言うまでもなく昨季のファイナリストでありグループリーグでは最大の強敵となる。また、昨年はベスト16でブンデスリーガ勢がプレミアリーグ勢に全敗して早くも大会から去っており、現在の力を測る意味でも絶好の相手と言えるだろう。早速試合から入る。
前半は序盤から速いテンポの一進一退の攻防が繰り広げられた。ボールをキープしながらチャンスを伺うバイエルンに対し、トッテナムはシンプルに速くスペースを突いてくる。前線からも厳しいチェックでバイエルンに息つく暇を与えない。いきなり12分に前線でトリッソのミスパスを誘発、すかさずゴール前に飛び出したソンにボールが渡りトッテナムが先制した。
トッテナムは今や世界屈指のストライカーとなったケインがじっとゴール前で虎視眈々とチャンスを伺うのに対し、もう一人のFWソンが豊富な運動量で動き回る。アジア人とは思えない屈強な体格にスピード、テクニックを兼ね備えた実に厄介な選手だ。
しかしバイエルンもすぐさま同点に追いつく。ゴール正面やや右よりでこぼれ球を拾ったキミッヒがゴール左隅に狙いすましたミドルシュートを決めた。キミッヒは基本的守備の選手だが、この精度の高いキックがある。故に非常に攻撃に色気を出して本職を疎かにすることがあるのだが、今回はこれが吉と出た。個人能力でバイエルンは同点に追いついた。
ここから15分は再びトッテナムのペースとなる。トッテナムは相変わらず激しい前線からのプレスが機能し、バイエルンからボールを奪うと素早い攻撃への切り替えでチャンスを得る。バイエルンはキミッヒとトリッソの両ボランチの息が今ひとつで、特にバイエルン左サイドにスペースを与えすぎだ。攻撃では新加入のトップ下、コウチーニョが徹底マークされている。
30分を過ぎると、トッテナムがペースを落とし今度はバイエルンが徐々に試合を支配するようになる。そして、前半終了間際の45分、ゴール前の混戦からこぼれたボールをゴール正面からレヴァンドフスキがミドルシュートを一閃し、バイエルンが勝ち越し点を奪うことに成功した。
レヴァンドフスキは殆どゴールに背中を向けた状態からボールを受けて、これを振り向きざまに決めると言う驚異的な身体能力をここで見せつけた。その反転の速さはもはや常人離れしており、相当状態が良いと見た。前半は総じて言えば一進一退の展開ながら、バイエルンが個人能力によるゴールで2点をリードして後半を迎える事となった。
後半、バイエルンは負傷した左サイドバックのアラバに替えてチアゴを投入する。チアゴはキミッヒの位置に入り、キミッヒは右サイドバックへ、前半右サイドバックを務めたパヴァールが左サイドバックに入った。すると明らかにバイエルンが後半開始早々からボールを支配する展開となる。
53分、その左サイドに入ったパヴァールとのワンツーで抜け出したニャブリがそのままゴール前に切り込み、見事なシュートをゴール右隅へ決めた。更にその2分後には相手陣内でパスミスを奪ったトリッソがペナルティエリア内やや左で待ち構えるニャブリにパスを送り、これをニャブリは左足で冷静にゴール右隅へ決めて4点目、リードを3点に広げる。
トッテナムも61分にPKから1点を返し、その後も単発ながらチャンスはある。しかし、如何せんシュートの精度が悪く得点には至らない。
バイエルンは83分にチアゴからのロングパスそ受けたニャブリが再びゴール正面から冷静に決めて5点目を得る。これでトッテナムは集中力が完全に切れ、87分にレヴァンドフスキ、88分にまたもやニャブリが決めて遂に7-2というスコアで最終的に勝利した。また、この勝利でバイエルンはグループリーグの首位通過に大きく前進することに成功した。
試合内容を総じて見れば、後半は圧倒的バイエルンペースだったとはいえ、前半は一進一退の攻防であり、これほどまでに差がついたのは意外な展開でもあった。シュート数から見てもバイエルン19(枠内10)、トッテナム15(枠内8)であり、トッテナムにもそれ相応にチャンスはあった。まさに決定力の差がスコアに出たと言える。バイエルンは相手のエース、ケインをほぼ封じ込めたのも大きかった。
特にどう見てもキレキレのレヴァンドフスキと最近日の出の勢いで成長しているニャブリの決定力は群を抜いている。ニャブリに関しては既にドイツ代表でも得点源となっており、両足で冷静に、キッチリと狙い澄ましたシュートを決めている。そのスピード、テクニック、アイデアなどを含め、その実力にもはや疑いの余地はない。
また、私が今日初めて見た選手としてコウチーニョを挙げておきたい。そのプレー見る限り、コウチーニョは中央高い位置でのプレーを好む比較的クラシックな10番タイプの選手に見える。これまでバイエルンは主に、中盤の底の展開からリベリーやロッベンのドリブルにサイドバックが絡むという攻撃を主体としてきたが、このコウチーニョの登場で中央から崩すパターンが増える事が期待される。
この日は非常に厳しいマークを受けており、あまり活躍できなかったが、逆に言えばコウチーニョが中央で相手守備陣を引きつけており、そのスペースを上手くニャブリが突いているとも言える。もっとも、コウチーニョが早くもスタメンに定着しつつある現在、これまでチームの顔でもあったトーマス・ミュラーは完全なベンチ要員になりつつある。来年以降、その処遇を如何にするのか気になるところだ。