ドイツ、コロナパンデミックのお陰で温室ガス削減目標を達成する

気が滅入るようなロックダウンが徐々に解除されてきているのも束の間、再びコロナの新規感染者数が上がり始めた。ワクチン接種は全く期待した程進捗せず、最も恐れていた第三波、そして再度のロックダウンがやって来るのはもはや確実である。更に数名の政治家は裏でマスク商売をしていた事が判明し、国民の政治に対する不満は一気に上がりつつある。

そんな最悪な雰囲気であるが、一方でコロナパンデミックによるポジティブなニュースも一つだけあり、それは2020年の温室効果ガス削減目標を達成する事に成功した事である。温室効果ガスの代表的なものは二酸化炭素であり、ドイツは1990年比で40%削減することを目標としていた。この目標達成はもはや絶望的と思われていたので、パンデミックによるポジティブな誤算となった。

もっと具体的に言えば、ロックダウンの影響で劇的に交通分野での排出が減った事が大きく貢献した。これはここ数年全く進歩の見られていない分野だっただけに、完全にコロナパンデミックのお陰となる。逆に言えば、パンデミックミックが終わり、皆が以前の生活を取り戻せば再び排出量は元通りになると言う事である。故に、パンデミック後もホームオフィスが推進される事は間違いない。

公共交通機関の利用や電気自動車を推進する以前に必要のない移動を減らせという話になるので、自動車や航空業界には益々厳しい未来になる。リーマンショック後は景気浮揚策で自動車業界が真っ先に支援されていたが、もはや完全に世の中は変わった。

しかし、パンデミックを抜きにしても非常にここ数年で進歩しているのが発電分野で、2020年は2019に比べて14,5%ものCO2削減に成功した。特に欧州内でのカーボンプライジングなどで炭素による発電が高額になるように設定した事が功を奏していると言われている。更に再生可能エネルギーの割合も全体の45%に上っており、この分野は予想以上の成果を上げている。

尚、原発もよくCO2を排出しないと言われるが、知ってのとおりドイツは原発も2022年に全て停止する予定である。ドイツの環境省によれば、原発は発電の際は確かにCO2を排出しないが、その建設や廃棄物の貯蔵などの処理を含めたトータルで見ればCO2を排出する。その排出量は炭素発電よりも遥かに少ないが、再生可能エネルギーよりは多い。故に今後も原発を推進するのは、安全かつ持続可能なエネルギー供給への変革を阻害している。

一方、より一層の努力を要するのが建築分野で、こちらは前年比で僅かに減少したものの、期待された程効果は上がっていない。この建築分野で重要だと言われているのが、オイルやガスで稼働する古い暖房設備を再生可能エネルギーに改築する事で、2026年からはオイルによる暖房設備の設置はストップされる。

故に今後はオイルによる暖房設備のある建物はかなり高い確率で改築されるので、物件を探す場合は気に留めておくべきだ。もっとも、電気で動く暖房は設備が安くても電気代がとんでも無く高額になるので特殊な事情がない限り止めておくべきである。

いずれにしても、地球温暖化は今後も避けては通れない問題なので、今回のパンデミックで得た知見を元に、今後は世の中も大きく変わっていく事だろう。