CO2削減目標を達成する為に、ドイツにも炭素税が導入されるだろう

ドイツの政治テーマはここ数年は難民問題が中心だったが、ここに来て中心となっているのは地球温暖化問題である。それが決定的になったのが、昨年夏の記録的な高温と干ばつだろう。イギリスの研究者によると、昨年のような記録的な夏は20世紀の始めまでなら245年に1度のレベルだったが、今日では8年に1度までに確率は急上昇したとのことだ。

今年既にここまで例年よりも乾燥した日が続いており、再び記録的な夏が来るのではないかと懸念されている。気候と天気は異なると言われるが、この認識が変わったのが昨年、つまり昨今の異常な暑さと乾燥は地球温暖化の影響ではないかと言われるようになったという事だ。

その地球温暖化を食い止めるべく、二酸化炭素の排出量を減らしたいドイツであるが、これが全く上手く行っていない。ドイツは既に2020年までに二酸化炭素の排出量を1990年比で40%削減するというEUからの目標を達成できない事は確実で、高額の罰金の支払いを避けられない状況となっている。

これはもちろん、ここ数年予想以上に景気が良く、人口も増加したことによるポジティブな要素の側面でもあるのだが、何れにしても二酸化炭素の排出量の大幅な削減はドイツにとって急務であると言える。2020年の目標がアウトでも、2030年までに1990年比で55%削減の目標は達成しなければならない。

ドイツは既に、最も大きな要因になっている褐炭、石炭の発電を2037年に停止する予定だが、それだけではまだ十分ではない。

そこで現在議論されているのが、炭素税の導入である。つまり、石炭やガソリン、オイル、ガスといった化石燃料に税金を課すと言う事だ。これらの燃料が高額になれば多くの人がその使用を控え、結果として二酸化炭素の排出量が減少する。特にテーマとなっているのは交通分野とされる。

もちろん、この炭素税の導入が議論されたのはこれが初めてではない。実際にいくつかの国は既に取り入れており、ドイツでも導入すればかなりの効果があると見込まれている。これまで導入されてこなかったのは、おそらくドイツ経済に極めて重要な位置を占める自動車業界に甚大な影響がでるからだろう。燃料が高くなれば、車よりも公共交通機関を利用するようになる。

また、これらの燃料が上がることで、郊外や田舎から車で都市内に通勤している人々、いわゆる”Pendler”の経済的負担が増える。これらの人々は一般的に、家賃の高い都市部から逃れて田舎に住み、かつ燃料費が安くつくディーゼル車を利用しているパターンが多い。つまり、所得がそれ程多くない人たちである。炭素税の導入は、これらの低所得者の懐を直撃する。

CDUの党首、アンネグレート・クランプカレンバウアーはこれを理由に炭素税の導入に対してはっきりと反対の立場を表明し、ヨーロッパ全土での排出取引による削減法を検討すべきだと主張した。首相のメルケルも炭素税の導入に懐疑的な姿勢を示している。

これは、フランスで起こった燃料、生活費の高騰に対する激しいデモ「黄色いベスト運動」のような国民の激しい反発を警戒しているのもあるだろう。実際にARDの調査でもドイツ国民の3分の2が反対という結果が出た。

これに対してドイツ緑の党はCDUを”Dagegen-Partei”、つまり環境保護政策に関して「何でも反対」する政党だと痛烈に批判した。これは多分、緑の党がこれまで”Verbotspartei”、つまり環境保護のためなら「何でも禁止」する政党だと揶揄されてきた事に対する皮肉、反発もある。

しかし、それを抜きにしても炭素税の導入は以前よりは確実に現実味を帯びつつある。

何故なら、現在のドイツは明らかに、環境に優しい行動は高くつき、環境に悪い行動が安くつくシステムになっているからだ。交通分野などその最たる例だろう。例えば電車と飛行機、車のうち、最も環境に優しい移動手段は言うまでもなく電車である。しかし、この電車が高い上に、一番信用できない。

アウトバーンは無料で時速無制限で走り放題の上に、政府は長年の間ディーゼルを税制上優遇してきた。飛行機での移動も大幅な低価格化が進んだ。因みに、ミュンヘンからベルリンで飛行機で移動すれば、およそ270キログラム二酸化炭素を排出するそうだが、これが電車だと34キログラムらしい。それでいて場合によっては飛行機の方が電車より安いし、遅延率が低い。

二酸化炭素排出量を大幅に削減するためには、国民全員の生活、行動が環境に優しいものに変わらなければならないが、現状ではそれは極めて難しいだろう。

炭素税の導入に明らかに反対の立場を示したCDU党首クランプカレンバウアーに対して、副党首であるアルミン・ラシェットは「(炭素税の導入を)簡単に否定するのは間違っている」と同党内のトップを批判した。

更にラシェットはここでスイスの炭素税システムを手本とするべきだとも述べている。スイスは2008年より二酸化炭素1トンに対し96スイスフランの税金を課しており、このうち3分の2は健康保険を通じて国民に還ってくるシステムになっている。

現状では多くの反対意見があるのも事実だが、現在の流れから行けば、近い将来ドイツにも確実に炭素税は導入される。昨日のニュースによるとドイツ各州の環境相が会合し、政府に炭素税の導入を検討するよう求めたとの事だ。低、中所得者への影響をどのようにして最小限に抑えるかが、重要なテーマになってくるだろう。

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