コメルツ銀行、コムディレクト銀行を完全吸収する事が確実となる

以前ドイツのネットバンクについて記事を書いたことがある。私自身もオンラインバンクであるコムディレクト(Comdirect)銀行を利用しており、そのサービスにはすこぶる満足していた。はっきり言えば、もう何年も銀行の店舗にも行ってもいないし、現金を下ろすのも数か月に一回である。殆どの管理や運用はオンラインで出来るので、わざわざ口座維持費を払ってまで既存の銀行を利用する価値はない。

しかし、先週私がコムディレクトのオンラインバンキングにログインしたところ、いきなり驚きのニュースが表示された。ドイツ第二の規模を誇るコメルツ銀行が、コムディレクトを吸収する意向を明らかにしたというものだ。コメルツ銀行は既に82%の株式を所有しているので、完全買い取りという形になる。そして、これで”Comdirect”のブランドは消滅する事が確実視されている。

コメルツ銀行と言えば、長年業績が著しくなく、半年ほど前にドイツ最大手のドイツ銀行との合併が噂になったが、これは破談となった。もっとも、コメルツ銀行は自力での業績回復は極めて厳しいと見られており、外国の大手銀行に買収されるのが確実視されていた。

しかし、コメルツ銀行は高いデジタル業務のノウハウとシステムを持つコムディレクトを吸収する道を選んだ。一方で、これまでおよそ7割を所有していたポーランドのM-Bankを売却する意向が明らかになっている。

このコムディレクト吸収のプロセスは今後加速的に進められると見られ、最終的にはこれでコメルツ銀行は国内だけで4300もの人員削減を敢行し、1000あった店舗もおよそ800に減らすとされる。まさに昨今の厳しい銀行業界を反映する大型リストラとなる。そして、これはコムディレクトの利用者である私にも大きな影響がある。

まず、先に述べたように、”Comdirect”のブランドは消滅し、新たにコメルツ銀行のシステムに統合される。つまり、これまで利用していたログインデータなどは間違いなく刷新され、新たなキャッシュ/デビットカードが送られてくるだろう。更に、コメルツ銀行のCEOは既に合併後の価格変更を予告している。つまり、これまで無料だったComdirectの口座維持費はおそらく有料になる。面倒な事態となった。

因みに、私はドイツに居住して以降、もう何度もほぼ自分の意志とは無関係に銀行を代えさせられている。最初はドレスナー銀行で、これはリーマンショックの折にコメルツ銀行に買収された。私はこのドレスナー銀行を当時のアドバイザーの勧めで、新しくできたアリアンツ銀行に変更したが、このアリアンツ銀行も数年後業務を停止した。そしてこれを現在のコムディレクト銀行に変更したものだ。今度はこれがコメルツ銀行に代わることになる。

コムディレクトはドイツで最も有名なダイレクトバンクの一つであり、25年存続した。そのオンラインに特化したサービスは評価が高かったが、結局親会社を救うために消滅する羽目になった。未だ非常に多いと言われるドイツの銀行は今後も大きく減少していくことは間違いない。