先週の日曜日、ドイツ政府と各州は原則的に他人との「接触禁止」を国民に義務付けた。普段の生活が取り戻せるまで長期戦になるのは間違いない情勢だが、命あっての物種である、耐えるしかない。
一方で現在、早急に必要とされているのが大規模な経済対策である。感染から守る為とはいえ、このままだと国民生活が経済的に破綻する。ドイツは長期間続いた好景気もあり、過去数年で記録的な税収を記録、6年間新規国債も発行しなかった。しかし、今こそ国民を救うために、惜しみなく国家の財源を投入する時だろう。
そして水曜日、ドイツ連邦議会は1560億ユーロの新たな債務を加えた史上最大の財政パッケージを決定した。これはドイツは基本法で定めている上限、GDPの0,35%を越えるものだ。ドイツ基本法(Grundgesetz)は日本でいう憲法に匹敵する絶対的な法律だが、これを一時的に無効にできる緊急事態のルールを適用した。
肝心の内容を大まかに理解すると、治療システムを強化し国民の健康を確保する事、コロナ危機で被った国民の生活を破綻させない事、経済を安定させ雇用を確保する事、の三つの目標が柱となる。ざっと見た限り、以下のような具体策が導入される、或いは既にされている。
国民の健康を確保する為に国内の病院に30億ユーロを投資し、集中治療室のベッド数を倍にする。失業者や収入が激減した家庭などへの経済的な支援に加え、住居の貸主は借主に対して賃貸契約を解除してはならない。
大量の失業者が溢れるのを防ぐ為、短時間労働の新たなルールを導入する。つまり、解雇する代わりに労働時間を減らすことで対応させる。減らされた労働時間の給与の6〜7割は国が負担する。
小規模企業や個人事業主に対しては、最大15000ユーロを直接支援する。中規模、大規模な企業に対しては税金の支払い猶予に加え、上限なしのクレジットプログラムを用意。更にはルフトハンザのような巨大企業は必要なら一時的に国有化する準備がある。
現在の非常事態があとどの位続くか全くわからない状況だけに、これで安心することは間違ってもできないが、ひとまず生き延びるための戦略は形になりつつある。
おそらく、次に来るのは更なる徹底的なテストだろう。これは現行のPCRテストとは別の、手軽にできる方式が近いうちに来るだろう。知っての通り、はっきりとした自覚症状がなくても新型コロナに感染している可能性がある。事実どこかの街のドライブスルー検査では10人に1人が陽性だったなんてニュースを読んだ。隠れ感染者はまだ山ほどいる。他人事ではない。
もちろん、テストをすれば感染者は数字の上で爆発的に増える。しかし、重要なのは見かけ上の安心ではなく、実際に何が起こっているかだ。それを把握しない事には、終息はどんどん先送りになる。そうなれば、どんな経済対策も意味をなさなくなる。