前回記した通り、ドイツでは外国からの帰国者は無料でのPCRテストを実施しており、そのうちいわゆるコロナ「危険地域」からの帰国者は事実上強制的にこのテストを受けなければならない。バイエルン州では既に先週の13日水曜日の時点で検査数はこの帰国者だけで10万人を超えており、そのうちおよそ1400人に陽性が確認されたとの事だ。
そういう訳で、現在では外国への旅行は大きな感染リスクとなっているのだが、7月13日からの4週間で何処の国からの帰国者が最も感染が確認されているかロベルト・コッホ研究所で公表されているので紹介しておきたい:
1.コソボ(1096件)
2.トルコ(501件)
3.クロアチア(260件)
4.セルビア(196件)
5.ブルガリア(166件)
6.ボスニア・ヘルツェゴビナ(156件)
7.ルーマニア(113件)
8.ポーランド(112件)
9.スペイン(107件)
10.マケドニア(92件)
11.アルバニア(86件)
12.オランダ(50件)
13.オーストリア(44件)
14.フランス(43件)
15.ウクライナ(43件)
目立つのは東ヨーロッパの国々、主にバルカン半島の諸国である。とりわけクロアチア、ブルガリアなどはドイツ人のバカンス先として人気であり、予想通りと言える。トルコもヨーロッパではないが、ドイツ人のバカンス地として定番である。
しかし、見ての通りダントツの1位はコソボとなっている。コソボは200万人弱の人口で既に1万人以上の感染者が確認されており、ZDFのリポートによると現在では人口200万人あたりにして毎日12人が死亡しているとされる。これは人口8300万であるドイツより多い。当然コソボはコロナ「危険地域」に指定されている。
コソボはドイツ人にとって定番のバカンス地ではないが、コソボからは多くの移民がドイツに住んでいるとされ、家族に会うべく多くの人が夏休みを利用して帰省したと思われる。また、7月終わりから8月はじめにかけてイスラム教で重要なイベントとされる犠牲祭もあった。
これらのバルカン諸国も当初はいち早くロックダウンするなどで感染の広がりを抑えていた模様だが、緩和後に感染者数が急増している。これらの国々はもともと経済的に豊かではないのでロックダウンのダメージも大きかっただろうから、国民のストレスも大きかった事は想像に難くない。実際にコロナ規制に対するデモなどが各地で頻繁に起こっているようで、報道によるとソーシャル・ディスタンスやマスクなどのルールもなおざりになっている模様である。
もっとも、それでも同時期にドイツ国内での感染は8607件あり、外国から持ち込まれた感染よりも明らかに多い。外国への旅行は大きな感染リスクである事には変わりがないが、現在のドイツのコロナの大部分が外国から持ち込まれたと考えるのは早計である。とりわけ、このような自国の都合の悪い状況になると直ぐに外国人の所為にする人間は一部存在するので、注意が必要だと言っておく。