先の一週間ほど、我々の生活が激変したことはこれまでに無かっただろう。猛威を振るう新型コロナの拡散スピードを抑える為、ドイツ政府と16州はかつてない程の強行措置に出ており、我々一般庶民の生活には甚大な影響が出ている。大袈裟ではなく「生き延びる事」、ただそれだけが重要な事態になりつつある。
既に先週初めの時点で、学校、保育所の閉鎖、物流や通勤を除く国境の閉鎖、屋内外の施設の閉鎖、レストランの営業時間制限などが実施された。
特に私の住むバイエルン州に関しては他州に先駆けて厳しい処置を打ち出しており、昨日遂に「外出制限」も発令された。つまり、食料品の調達や仕事などの止む得ない理由がない限り、基本的に外出してはならない。広場でのスポーツや散歩は一人或いは家族間でのみOKだが、集団を作ってはならない。見つかった場合、「高額の罰金」が課される。
このような厳しいルールが適用になった背景としては、ここ数日間での感染者の急増がある。バイエルンは昨日だけで感染者が35%増加した。現在の情報によるとドイツ全体の感染者は19848人、うち死者は67人となっている。数字から言えばまだドイツの死亡率は低いが、イタリアの医療崩壊の状況を見れば、明日は我が身だと考えるのは当然だ。
また、先週より首相のメルケルは他人との交流を出来るだけ避けるようにと訴えており、木曜日にはテレビで国民向けに異例のスピーチを行った。ここでメルケルは「第二次大戦後最大の危機」、「深刻に受けて止めて」とルールを守り感染を拡大させないよう国民に切実な要請をした。
しかし、一部の人間にとってはこれもどこ吹く風で、こんな状況でも「コロナパーティ」などという馬鹿げた催しをする輩も存在する。特にまだ学校通いの若者などは事態の深刻さなど分かっていないだろう。まあ腹立たしいが、これはある程度仕方ない。事態が深刻なだけにより強制力を持ったルールで有無を言わさず従わせるしかない。
それ以前にも既にドイツはメルケル自身が「国民の6、7割が感染する」とし、ロベルト・コッホ研究所も「収束まで2年かかる可能性がある」などと、当初のパニックを避ける為の気休めから、完全に最悪を想定した発言に切り替わった。当然だろう、数字が何だろうが、この期に及んで自画自賛やアピールなど一切必要ない。いつ感染爆発が起きてもおかしく無い。
また、知っての通り、今年開催される筈だったビッグイベントであるサッカーEURO2020が1年延期される事が決定した。これは楽しみにいていたイベントだけに残念だが、現状どう見ても止むを得ない。この大会は欧州12ヵ国での分散開催のため、大会延期の損失も12ヵ国で分散されると考えられる。オリンピックと異なり、迅速に延期を決定し選手たちの精神的負担が早い段階で軽減された事は、不幸中の幸いかもしれない。
さて、この先更にどんな強硬措置が施されるか注目されるところだが、残されるはドイツ全土の「外出禁止令」(Ausgangsperre)と言われている。そして、これは既に本日、土曜日の国民の行動を見て決定されると、政府から発表されている。