ロックダウン緩和後のドイツ、次々と新たな決定が下される

先週からドイツ全土で新型コロナによるロックダウン規制が若干緩和されており、国民の生活はウィルスと共存しながら経済活動を再開させる新たな段階へ突入した。現段階ドイツでで最も重視されている数値は”Reproduktionszahl”、いわゆる「再生産数」である。これは1人の感染者が何人にウィルスを感染させたかという数値だそうだ。この数値が1以下であれば、ウィルスの感染を縮小している状態とされる。

この数値は現在のドイツでは0,9となっており、際どく感染を縮小させている状況である。しかし、これがもしも1,1となった場合、10月には医療崩壊の危機に瀕するとのことだ。1,2なら7月、1,3なら早くも6月にそれは来る。今回緩和措置に出たからと言って、厳しい状況である事には変わりがない。緩和措置は最終的に州の管轄になるのだが、首相のメルケルも一部の州の決定はやや勇み足だとして苦言を呈した。

そのような再度の引き締めムードの中、ドイツでは対コロナ長期戦を見据えた決定が次々と下されたので紹介しておく。

マスク装着の義務化 : これは鼻と口を保護するものならOKである。当初はマスクの装着は「緊急に推奨する」との要請レベルだったが、早々に義務化に踏み切ったザクセン州を皮切りに僅か数日でドイツ全土の州がこれに続いた。州によってルールに若干の差異があるが、概ね公共交通機関と及び店の中などでこれは適用される。

もっとも、車の運転中は逆にマスクをしていたら違反となる可能性があるので、これはよく注意する必要がある。これは殆ど「罠」ではないかと思う位タチが悪い落とし穴なのだが、ドイツの交通法で「運転中は顔が認識できる状態で無ければならない」とのルールがあるので、警察がマスクにより運転手の顔が識別出来ない状態と判断すれば、最大60ユーロの罰金を喰らう。

因みに私の住むバイエルン州は、マスク装着の義務は明日の月曜日から適用になる。違反した場合の罰金は150ユーロ、再犯者はこれが倍になる可能性がある。自分ではなく「他人を感染から守るため」という明確な意図が州から説明されており、最も重要なのはソーシャル・ディスタンスである事には変わりがない。

オクトーバーフェストの中止 : 毎年9月末から2週間、およそ世界中から600万人が訪れる巨大イベントなので、開催されたなら世界を股にかけるメガ・クラスターになるのは分かり切っている。中止による損失はおよそ12億ユーロと言われており、極めて大きな経済的な打撃になるが、背に腹は変えられない。因みにオクトーバーフェストは1854年と1873年にもコレラの蔓延によって中止になった事がある。

現段階でドイツは取り敢えず8月31日までは大きなイベントは禁止となっているが、おそらく今年中はイベントは無理だろう。オクトーバーフェスト以外の収穫祭はもちろんのこと、クリスマス・マーケットも今年は開催されないと踏んでいる。例外的にサッカー・ブンデスリーガだけは近いうちの無観客試合での再開計画が進行しているが、本当にそれで良いのか、そもそも実現可能かどうか甚だ疑わしい。

短時間労働金の上昇 : ドイツでは現在新型コロナ禍の雇用対策として短時間労働金制度が大いに活用されており、労働者は減った労働時間分の給与の60%(子持ち世帯は67%)を国が補償するシステムをとっている。このうち労働時間が半分以下になった人に関しては、この補償が4ヶ月目からは70%、7ヶ月目からは80%に上昇し、これは最長で今年末まで適用される。

この休業補償の補償割合の上昇については各労働組合やSPDが強硬に主張していたものだ。休業時間の給料のうち80%も補償されるなら、収入によっては休業している方が寧ろ得だとも感じられる。個人的には60%位が妥当だと思っているのだが、状況が状況だけに止むを得ないかもしれない。

この他にも今年の7月から1年間レストランの利用には軽減税率の適用や、学校のオンライン授業の助成に5憶ユーロを投資する事などが決定した。更にはまだ最終的に決定はしていないが、医療介護職の人々には1500ユーロのボーナスが支払われるプランがある。このコロナ禍での社会を支えた人々を正当に評価するためにも、このような特例は是非認めるべきだろう。

これらの措置はコロナ禍が長期戦になる事を見据えたものであり、直ぐに評価することはできない。保健相であるイェンス・シュパーンも、ドイツの政治上過去にこれほど多くの重要な決定をした事はなく、後に誤りだったとして国民に許しを乞う事になるかもしれないと言う異例の発言をしている。彼らとて人間だ。前例の無い事態だけに、試行錯誤しながらの難しい舵取りを迫られている。

それでも、これまでのところ政府の対応にはおよそ9割以上の国民が納得している。これは何よりも国民に対して誠実に、可能な限りの透明性を持って対応している事に尽きるだろう。

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