およそ3週間前にロックダウン政策からの若干の緩和が決定されて以降も、ドイツの新規感染者数は徐々に減少傾向にあり、実行再生産数「R」も現在ではおよそ0,8に留まっている。一部からは早急な大幅緩和を求める声も当然ながら出ていた。
そして先週、遂にドイツ政府は新型コロナ禍における新たな規制緩和を発表した。簡単に言えば、1,5mのソーシャル・ディスタンス、公共交通機関でや買い物でのマスクの着用以外、間も無くドイツ全土で適用される統一の規制はほぼ無くなる。
これまでドイツは州ごとに若干の差異がありながらも、可能な限り全土で統一した措置を取ろうと連邦政府が中心になって対策を進めてきた。しかし、今後は本来の連邦制度に基づいて州ごとに対策が委ねられると言う事だ。例えば、被害の大きかったバイエルンと極めて少なかったメクレンブルク・フォアポンメルンなどはおそらく全く異なるルールになる。
また、各州の首相の間でもこの規制緩和に関しては大きく意見が割れており、例えばノルトライン・ヴェストファーレンのラシェットなどは大幅な緩和を主張していた。規制による経済的な影響などもあり、徐々に全員の意見をまとめて統一ルールを作る事も難しくなってきたのも事実だろう。ポイントであるソーシャル・ディスタンスを保てば、今のところ感染拡大を抑えられる目処はついた。
ただし、過去7日間で10万人あたり新規感染者数が50人に達した場合、該当の地方自治体は再び規制を強化しなければならない。ZDFのデータによると現在では5自治体がこれに該当しており、これらの地域は最悪再びロックダウンされる可能性がある。
今回の決定で最も物議を醸している事があるとすれば、サッカー・ブンデスリーガの再開だろう。ブンデスリーガは早くも今月の15日から無観客で残りの9節が開催される。国内だけでなく世界的にもまさに異例の決定で寧ろ反対意見が多い。ブンデスリーガを運営するDFLによれば、この再開なしでは幾つかのクラブは倒産の危機に瀕するとの事である。
ここでは選手の検査はもちろんのこと、チームは試合前に隔離施設に行くなどの厳しい感染予防のルールが設定されている。先日はヘルタBSCの選手がソーシャル・ディスタンスをまるで無視したチーム内の様子をSNSで公開し世間を激怒させたが、選手たちの振る舞いはより一層注目を浴びる事になり、社会の手本としての役割も求められる。
因みに、私の住むバイエルン州であるが「外出制限」のところが「接触制限」となり、親しい親戚、或いは別世帯の1名となら会っても構わない。来週からはテニスやゴルフなどの接触無しのスポーツなら許可され、学校も順次始まり、全ての店の営業が許可される。レストランは18日から屋外の営業がスタートするのでビアガーデンも開くはずだ。絶望的と見られていたバカンスも国内旅行なら救われる可能性が高くなった。
他の州は詳しくは見ていないが、条件付きで小規模のイベントなども許可される模様なので、全体的には随分と規制は緩まったという印象だ。連邦政府と州のミーティングもこれまでのようには頻繁に行われなくなり、首相のメルケルが新型コロナのテーマで表に出て来ることも減るだろう。第二波が来る事は確実なので束の間の緩和になるかもしれないが、そろそろ経済的にも取り戻さなければならないし、精神的にも開放が必要な時期だ。