高止まりしていた新規感染者数がここ数日で再び劇的に増加してきた事でドイツは完全な非常事態モードに入りつつある。そして先の日曜日、首相のメルケルが会見に現れ、予想通り今週の水曜日から再び厳しい措置が実施される事が発表された。ざっくり言えば、春先同様、学校も店も基本全て閉まる。
もちろん生活必需品を扱う店舗、食事のテイクアウト、教会での礼拝などは認められており、他の1世帯最大5人までなら会っても構わない。しかし、州によっては正当な理由がなければそもそも外に出られない「外出制限」、或いは夜間の「外出禁止」令が出ることは確実である。
クリスマス、大晦日に関しても今月初めには一旦特例措置が発表されたが、これも覆される。但しクリスマスのみ最大4人まで、近親者となら会っても構わない。その際14歳未満の子供は数に入れる必要はない。因みに今回の措置「ロックダウン」ではなく、「シャットダウン」と呼ばれている。
今年の冬にコロナがぶり返す事は予想されていた事で、再び生活に制限が加えられるのはある程度想定内だったとは言え、正直なところ、ここまで酷い状況になるのは考えてはいなかった。現在私の住むミュンヘンの10万人あたりの感染者数は220人を超えている。夏が過ぎた頃はこれが50人以上なら赤信号と言われていたが、もはやそんな数値は完全に意味がなくなった。
健康相のシュパーンは12月の初めの時点では店を閉める程ではないと言っていたが、おそらく、早くにクリスマスの特例措置を決定した事が多くの人出を誘発し、あっという間に感染が広まったのではないか。いずれにしても、ドイツは今回ばかりは見通しを誤ったと言わざるを得ない。そして、この措置はひとまず1月10日まで続く事が決定しているが、おそらくそれ以降も続く。
ドイツはこれまで、他の周辺国に比べて比較的新型コロナを上手く抑え込んでいると評価されてきたが、これは単に春先に早めに対策に取り掛かったからに過ぎない。別にドイツが他国に比べて優れているわけでも、何でもない。せめてもの救いは、政治家自身もそれを自覚し、可能な限りの情報の透明性を持って、誠実に対応している点だろう。
また、肝心の補償であるが、財務相のショルツが言うには更なる「包括的な一時補助金」を出すと発表している。今回は小売店や美容院なども閉まるので、再び前例を見ないような国家財政からの出費になる。しかし、ショルツは11月の時点で、ドイツは今年と来年に関してはコロナ禍で必要な経済的援助を可能にする体力を備えていると述べた。
これももしかしたら、数年続いた空前の好景気と頑なに拘った黒字財政のお陰、かもしれない。当時これを私は余りにもケチだと述べた事があるが、よもやこのような形で返って来るとは思わなかった。もっとも、これも数年後に増税という形で再度返ってくることは間違いないだろう。