ただでさえ憂鬱な11月に準ロックダウン措置でうんざりする毎日が続いているが、待望のワクチンの実用化が近づいているのとニュースが入り世間に希望を抱かせている。
まず、このワクチンについてだが、ドイツのベンチャー企業バイオンテックとアメリカの製薬企業であるファイザーが開発している物が最も実用化に近いと言われており、名前は”BNT162b2″とされる。バイオンテックはフランクフルト近くのマインツに所在しておりCEOはウグル・シャヒン、名前から推測できる通りトルコ系である。シャヒンは4歳で父親と共にトルコからドイツへ移住してきた移民であり、今年の1月の時点で既にこのワクチンの開発を開始していた。
1月といえばまだ新型コロナの存在が世間に知られ始めた頃であり、当時は多くの人が現在のような大惨事になるとは予想していなかっただろう。シャヒンは年内の実用化に向けて猛スピードで開発を進め、ついに実用化間近まで漕ぎ着けた。バイオンテックの株価は当然爆上がりで、シャヒンは既に億万長者である。
つまり皮肉な事に、日頃からドイツで散々こき下ろされているトルコ系の移民に、多くのドイツ人が救われる事になる。何故各国が優秀な外国人を喉から手が出る程欲しがるか、まさにこれが示しているだろう。移民のポテンシャル、ハングリー精神を舐めてはならない。彼らの成功への意欲は、ぬるま湯に浸かった自国民よりも遥かに強い。
話が横道に逸れたが、EUはこのワクチンを最大3億本既に確保している模様で、これはEU諸国へ人口の多さに比例して配布される。それに従えば、ドイツへ配られるのは最大でおよそ5600万本との事になる。しかし、ドイツは国内でワクチンを開発している別の2社とも既に交渉を済ませている模様で、健康相シュパーンは1億本を確保できる事を望んでいると述べた。
因みに、他の2社とはキュアバック、IDTビオロギカである。キュアバックに関しては早い段階でアメリカがこのワクチンを確保しようと目論んだと言われて話題になった。いずれにしても、十分な数を確保できるよう、国は既に根回ししていたという事だ。
そして、その待望のワクチンがヨーロッパで実用化されるのは来年の初め頃と言われている。当然ながら最初は供給できる数も限られているので、接種を受ける人の優先順位付けが必要になる。これをドイツ政府はドイツ倫理委員会、国立学術アカデミー、予防接種委員会の勧めに従って決定した。
それによると優先的に接種されるのは、命の危険がある重症患者、その患者の治療に携わる医療従事者、社会システムを保つ為に重要な職種、例えば警察、教員、消防士、保育士などとなる。
単に元々持病がある、或いは60歳以上などの理由で優先的に接種を受ける事は出来ない。重症化へ何らかの危険因子を持つ人々はおよそ4000万人に昇ると言われ、これはドイツの人口の半分に当たる。それ程の数は最初の段階で供給不可能だとの事で、全ての人々が接種を受けられるのは、およそ来年の夏ごろではないかと言われている。
もちろん、ワクチンが出来たからと言って直ぐにコロナ前の生活が取り戻せると言うのは早計で、少なくとも来年以降もマスクとソーシャル・ディスタンスは必須だと言われている。まあそれくらいは計算に入っているので問題ない。新型ワクチンでせめてロックダウンは回避されるようになってくれれば、それでひとまずは御の字だと思っている。