ドイツ鉄道の遠距離交通の定時運行率はおよそ75%、つまり4本に1本は遅延する。しかもこれは5分以内の遅延は含まれないので、実質はこれより酷い。更にこの数字には実は欠便は含まれていない。とある個人調査によると、この欠便率は4%以上に上る。夏場はもっと酷く7%にもなるそうだ。
もちろんこれは代わりの便を出している可能性があるので、実害がどの程度かは何とも言えないが、おそらくこれは先進国としてはあり得ないレベルだろう。目玉だったICE車内無線LANサービスも最初だけで、最近は多分皆が使うから全然繋がらなくなった。
更にドイツ鉄道はこのような劣悪なサービスながら、自動車での移動、場合によっては飛行機よりも価格が高い。当然ながら、多くの人は移動に自動車や飛行機を使う。私も例外ではない。
じかし、ドイツは二酸化炭素排出量削減の目標達成の為に、国民の移動手段を車や飛行機から鉄道にシフトチェンジさせる必要がある。言うまでもなく、鉄道での移動は自動車や飛行機よりも移動者一人頭の二酸化炭素排出量が大幅に少ないからだ。
そこで、昨年可決された通称“Klimapaket“において、今年から鉄道による50Km以上の移動には今年から軽減税率が適用されるようになった。つまり、ドイツ鉄道が運行するICE,IC,ECなどはチケット購入の際の付加価値税が19%から7%になる。この結果、チケットの価格はこれまでよりも実質10%安くなる。ドイツ鉄道はこれにより年間少なくとも500万人の利用者増を見込んでおり、当然ながら便数は増える。
まあ、これで若干はドイツ鉄道を利用しやすくなったように見えるが、肝心のサービスが改善されない事には10%の値下げなど焼け石に水なので、現状ではまずは様子見といったところだろう。
因みに、この軽減税率はドイツ鉄道に限らず適用されるが、遠距離交通に関して言えばそのシェアは99%なので、実質ドイツ鉄道のみと言って差し支え無い。また、近距離交通はすでに7%の軽減税率が適用されているので、これまでと変更ない。
また、この新たなルールで最も割を喰ったと思われるのが、おそらくFlixbusをはじめとした遠距離バス事業者だろう。実は遠距離バスの環境負荷は鉄道と変わらないか、寧ろそれより少ない。にも関わらず、軽減税率は適用されない。寧ろガソリン代が今後急激に高くなるの事を考えれば、これまでよりも条件は著しく悪くなる。Flixbusは当然これを不公平だとして法的に訴える意向を示している。
ガソリン代が高くなることによって、当然ながら自動車の利用は今後高くなることは間違いないが、一方のもう一つの問題である飛行機も今年の4月から増税によっておよそ5~17ユーロ高くなるので、同時に把握しておいた方が良いだろう。