昨日DFBカップ決勝戦FCバイエルンvsバイヤー04レヴァークーゼンを観戦したので感想を記しておきたい。ブンデスリーガ後半を圧倒的な強さで制したバイエルンに対し、今季のレヴァークーゼンは5位に入った。直近の対決ではバイエルンが4-2で勝利した。試合に入る前にレヴァークーゼンというチームについて少し印象を記しておく。
レヴァークーゼンはその名の通り大手製薬会社バイヤーがスポンサーであるブンデスリーガの強豪チームである。クラブの全盛期は1990年代後半から2000年代始めだろう。特にミヒャエル・バラックを擁した2001/2002シーズンはCL、DFBカップで決勝に進出し、ブンデスリーガも優勝目前まで漕ぎ着けた。しかし、この何れも優勝出来ないと言う不運を味わった。
ここ最近の傾向を総じて言えば、良い年は4位以内でチャンピオンズリーグ出場権を獲得、それ以外も大抵はUEFAカップ出場権内に着地する安定した成績を残している。伝統的に非常に攻撃力の高いチームで、最近はカイ・ハーヴァーツというドイツ屈指の期待の若手を擁する。他にもフォランド、ベララビ、アリミ、ベンダー兄弟、ター、デミルバイといったドイツ代表招集歴のある選手を揃えている。
この決勝戦に話を戻すと、レヴァークーゼンは4-2-3-1のワントップに普段トップ下のハーヴァーツを起用する奇策を採用した。一方バイエルンはこの試合も4-2-3-1のシステムに、ここ数試合と変わらないスタメンを送り込んできた。監督がハンジ・フリックになって以降、スタメン、システムはほぼ固定している感がある。
試合が始まると予想通り前半からバイエルンが試合を支配し、前半15分にゴール正面やや右からのフリーキックをアラバが左足で決めて先制する。一瞬レヴァンドフスキが右足で行くと思いきや、短い助走からアラバが唐突に左足で蹴りキーパーの反応が遅れた。キックも見事だったが、この辺りの狡猾さもバイエルンの強さだろう。
更に24分にはレヴァークーゼンのビルドアップをキミッヒがカットし、更にキミッヒは矢継ぎ早に右サイドを走るニャブリへの見事なスルーパスでレヴァークーゼン守備陣を切り裂いた。これをニャブリがドリブルからゴール左隅に決めて2-0とする。見事な攻守の切り替えの速さだ。
反撃したいレヴァークーゼンだが全く反撃の糸口を見出せない。頼みのハーヴァーツは前線で孤立し、止む無く中盤まで降りてくる。レヴァークーゼンは後半開始と同時にFWのフォランド、テクニックの高いMFデミルバイを投入し、状況の打開を図る。ハーヴァーツはこれでFWから本来のMFのポジション一列下がった。
後半も相変わらずバイエルンのペースで試合が進むが、60分にレヴァークーゼンがビッグチャンスを得る。右サイドを突破したディアビがPA内中央へ走り込んだフォランドにパスを送り込んだ。しかし、どフリーのフォランドはこのボールを空振りすると言う信じがたいミスを犯し、この千載一遇のチャンスを逃してしまう。
その直後、ノイアーのゴールキックをレヴァンドフスキが直接ミドルシュートを放ち、これに意表を突かれたGKフラデツキーは正面のボールながら後ろに逸らしてしまう。ボールはゴール内に転がり込み3-0となった。これで事実上勝負は決まった。
レヴァークーゼンはその5分後にコーナーキックからベンダーのヘディングで1点を返し、この後もやや疲れの見えるバイエルンに対し攻勢をかけた。しかし、残り10分にもなるとレヴァークーゼンにも疲れが見えはじめ、バイエルンは89分にレヴァンドフスキが4点目を挙げた。
レヴァークーゼンは試合終了間際にハンドで経たPKをハーヴァーツがゴール左上に決め、2点目を決めた。これはノイアーも一歩も動けない程見事なキックだったが、勝負には当然影響のない得点だ。最終スコアは4-2でバイエルンが勝利した。
総じて言えば、バイエルンの地力がレヴァークーゼンより上だったという、実力差通りの内容、スコアとなった。終了間際にチアゴとコウチーニョというワールドクラスを出せる選手層と個々の技術の高さ、大きなミスを犯さない堅実な試合運び、組織としての完成度の高さは、今日の試合を見る限りブンデスリーガでは他の追随を許さない。これに来期はレロイ・サネが加入する事が決定している。
レヴァークーゼンも後半は良い時間帯を作ったが、肝心な場面で決定的なミスが相次いだ。特にドフリーでのフォランドの空振り、GKフラデツキーの後逸、更にはデミルバイの有り得ないコーナーキックでのミスキックなどは、もはやミスと言うよりは「珍プレー」の類に入る。バイエルン相手にこのようなミスが相次いでしまえば、勝つチャンスは皆無だろう。
バイエルンはこれで今季ブンデスリーガとDFBカップの2冠を達成した。予定では8月にチャンピオンズリーグが継続される事になっているので、あわよくば3冠のチャンスもある。他国に先駆けてリーグ戦を開始しているのは、コンディション的には寧ろプラスに働くのではないか。こちらでも良い試合を期待したい。