2022年以降、欧州販売の新車にハイテク運転支援システムが義務化される

都市部での渋滞の増加、窒素酸化物や二酸化炭素排出による環境問題、それに伴う電気自動車や自動運転の普及など、ドイツ経済を引っ張ってきた自動車業界が大きな変革の波に晒されているのは明白であるが、つい最近、この自動車に関して我々一般庶民にも大きな影響を及ぼすであろう決定が欧州委員会より為された。

2022年5月以降に欧州で販売される新車は、総じておよそ30種類にも及ぶハイテク運転支援システムの搭載が義務化される。理由は交通事故による死亡者、重傷者を減らすことにある。

まずその中で最も注目されているのが、ISA(Intelligent Speed Assistance)と呼ばれる自動でスピードを制御する装置である。このような装置は既に現在でも追従型クルーズコントロールなどで一般化されており、特別に目新しいものではないように見える。しかしクルーズコントロールの場合、時速何キロで走るかどうかはあくまでドライバーが手動で設定するシステムである。

一方ISAの場合、車はビデオカメラとGPS機能で道路の時速制限を認識し、その時速制限に従って自動的に速度が調整される。例えば、制限時速100キロの国道から制限時速50キロの集落に入る場合、自動的にモーターの動きが調整されてスピードが時速50キロまで落ちる。

因みに、この機能は現在ではメルセデスのEクラス、Sクラスでは既に搭載可能らしい。当然そのようなクラスの車は私には縁がないが、こんな機能がすべての車に義務化されるのであれば、一刻も早く姑息なオービスは取り壊してもらいたいものだ。

もっとも、この機能はドライバーによってオフにすることも可能であることは付け加えておく必要がある。まあ当然だろう。仮にこの機能が常に強制的にアクティブならば、故障して事故でも起こった場合、ドライバーの責任ではなく車の責任という話になりかねない。また、追い越しなどをする際には当然この機能はオフにする必要がある。あくまでもドライバーを支援するシステムだという認識である。

まあ、確かにそのようなドライバーの意思に委ねられるシステムであれば、時速200キロでぶっ飛ばす危険なドライバーを排除するのは難しいかもしれない。しかし、そこで出てくるのがもう一つの目玉でもあるブラックボックスである。ブラックボックスとは既に飛行機事故の際、コックピットの会話や飛行データを記録したものとして原因究明の手がかりとなるが、このブラックボックスの搭載が車にも義務化される。

このブラックボックスのデータを誰が読み取ることが出来るかは明らかになっていないが、順当に考えれば警察か役所だろう。つまり、ドライバーは監視されているという事だ。この他にもアルコールが基準値以上であれば車のスタートがブロックされるシステム、疲労やわき見運転にアラームを出すシステムなどが義務化される。

先に挙げたISAもそうだが、これらの新たなハイテク機能の搭載はドライバーを支援する一方で、監視されているという事でもある。実際には交通事故での死亡者数は年々減少しており、このような新たなハイテク支援システムの義務化に嫌悪感を示す声も大きい。しかし、車の運転は決して遊びではない。

非常識な運転で事故を誘発する劣悪かつ攻撃的なドライバーは後を絶たず、私から言わせればこれは大きな社会問題である。EUはすべての交通事故の9割は人間のミスに因るものとして、2050年までに交通事故の死亡者、重傷者をほぼゼロにすることを目標としている。

もう一つ指摘しておきたいのは、このようなシステムの義務化で現在街にあふれる車の数は今後間違いなく減少する。言うまでもなく、小型車やコンパクトカーまでもがこのようなシステムを搭載する事により価格が高騰するからだ。少なくとも10000ユーロ台で販売される新車は無くなるのではないか。

車好き、運転好きのドイツ人にとっては非常に残念なことかもしれないが、個人的にはこれも非常に結構なことだと考えている。ぜひ車を減らし、人間的かつ安全、環境にも良い社会に向けて舵を切って頂きたい。