2015年に難民を大量に受け入れて以降、それに伴って増加した難民、亡命者に対する差別や犯罪が問題視されつつある。もちろん、彼らによる犯罪もあるのだが、ここではひとまず置いておく。昨年ケムニッツで発生した右翼系団体およびネオナチによる大騒動などはいかにこれらの外国人を敵対視しているドイツ人が多いか象徴しているだろう。これは外国人としてドイツに住んでいる私にとっても気がかりになっている。
しかし、やはりこの外国人、とりわけ難民、亡命者に対する拒絶、抵抗感は旧西ドイツと旧東ドイツで大きな差がある事が窺える。マンハイムにあるヨーロッパの経済研究所が確認したところによると、旧東の州での難民、亡命者に対する犯罪確率は、旧西ドイツよりも10倍も高くなるとの事だ。これは2013年から2015年までの統計を基に弾き出された。
因みにドイツラジオ放送局(Deutschlandfunk)によると、この期間最も犯罪率が高かったのが、ドレスデンの南、ケムニッツの東寄りのいわゆる「ザクセンのスイス」とも呼ばれる地域の区画で、居住者10万人あたり9,76件発生した。このあたりは観光地としても人気の場所だが、ザクセン州ケムニッツやドレスデンの近くなので「やっぱり」という感がある。
つまり、もともと外国人が少なかった地域ほど、難民、亡命者に対する犯罪率が高い傾向にある事が確認された。これに関しては一部で旧東西ドイツ間の経済的な格差が原因だとの意見もあるが、これはさほど決定的な要因ではないとされている。重要なのは、既に外国人がもともと多く存在し、既に現地のドイツ人が外国人と共生した経験があるかどうだとの事だ。
個人的には、旧東ドイツの州でAfDが躍進し反外国人デモなども盛んなのは周知の事実なので、この傾向自体は驚きに値しないが、統計上10倍も違うとなると殆ど別の国だろう。実際に私が住んでいるミュンヘンは4人に1人が既に移民背景をもっており、医者や銀行員が外国人などと言うのも珍しくもなんともない。一方私はザクセン地方に旅行で訪れた際にかなり多くの右翼的な政治団体のポスターを多く見たので、多少の警戒心を持たざるを得なかった。
幸いな事に私はこれまで、反外国人的な動機の犯罪に巻き込まれたことは無い。もちろん、どのみちそのような事に巻き込まれるリスクはそこまで高くない。しかし、少なくとも私は自身がここドイツでは外国人である事は強く自覚している。
既に長く住んでおり、社会にも問題なく(むしろ日本以上に)適応しているので、そのような事を意識する必要はないと言うかもしれないが、詰まるところ、長く住めば住み、より社会を知れば知るほど、自身がドイツ人とは異なることを実感するようになったとは言っておきたい。
もちろん、こういった感覚は個人レベルでそれぞれ異なるだろう。ただ、あくまで個人的には、外国人として異なる社会や文化圏でトラブルに巻き込まれたり、必要以上にストレスを感じない為には、現実的には多少の偏見や差別が存在する前提でいた方が良いと考えている。
一方で、言語をマスターするなど社会に適応すれば、現地人にはない能力を認めて貰えるなどポジティブな面もあるので、必ずしも悪い事ばかりではない。そうなれば受け入れる側にもメリットになる。重要なのは、現地人も外国人もお互いに大きく異なる人間であることを自覚した上で、理解し共感しようと努めることだ。旧西ドイツではそれは概ね上手くいっているが、旧東ではそうでないという事だろう。