完全に迷走するドイツのコロナ政策、メルケルが国民に謝罪する

気の遠くなるようなロックダウンを耐えて、ワクチン接種も始まり、さすがにイースターの祝日あたりからは通常の生活が戻ってくるだろうと思っていたが、とんだ思い違いだった。ロックダウンの解除が徐々に始まった途端、再び新規感染者数が急激に上がり始めたからだ。これにはさすがにメルケルも「急ブレーキ」を掛けざるを得ないと述べて再びの引き締めを示唆する事態となった。

そう言う訳で、先週の月曜日に例によってのコロナ会議がドイツ政府と州で行われたのだが、ここで下された決定が国民の間で大混乱を呼んだ。平たく言えば、本来は来週の金曜日から始まるイースターの4連休を木曜日からスタートさせる5連休にし、しかも全て祝日扱いにすると言うのである。

関係のない人から見れば、たかだか1日休日が増えるから結構な事ではないかと思うだろうが、それは誤りである。

本来のイースターの連休は木曜日は平日、金曜が祝日、通常の土曜、日曜と続き、月曜が祝日となる。つまり木曜と土曜日は少なくともスーパーマーケットなどの小売店は開いているのだ。これが全部祝日なるという事はつまり、これらの店が5日間にわたって全て閉まることになる。例外として土曜日はスーパーは開けても良い、と言うのだが、このような例外が更に混乱を呼ぶ。

そもそも営業する側も何時から何時まで開けても良いのか、閉めたままにしても良いのか。どの程度の人出があり、どの程度の仕入れをしたら良いのか、おまけに本来なら木曜日の平日が急に祝日になったものだから、その仕入れもいつ到着するのか、完全にそれまでのプランが狂う事になる。

市民も5日間も祝日が続くとなれば、それが始まる前にあらゆるものを買い溜めしておく必要がある。それ以前に、こんな全く予想しない、普段ではあり得ない事が急に決まった訳だから、まずは政府の発表を正しく理解しているのか、誰もが疑心暗鬼になるのは当たり前だ。どれ程のパニックが各地で起こったのか推して知るべしだろう。

そして当たり前だが、この決定に対しては各方面から激烈な避難が続出し、なんとメルケルは翌日にはこれを撤回するという前代未聞の事態となった。この5日間で人手を完全にシャットダウンし新規感染者を減らそうとしたのだろうが、国民の混乱は目に見えており、これは完全な悪手だった事は明白だ。メルケルはここで「私のミス」とはっきりと謝罪し責任の所在を明確にしたが、国民のコロナ政策に対する不信は激増した事は間違いない。

しかし、かと言って現在の状況を放置する訳にもいかないのが現実でもある。誰もが春先には状況はマシになると思いきや、新たな波が来ているのだから、もはや国民の我慢も限界に達しているだろう。頼みのワクチン接種は全く予定通りに機能せず、未だに国民の10%しか接種されていない。

アストラゼネカのワクチンに至っては副作用の懸念で一旦ストップされるなど、懸念が払拭されておらず国民も疑心暗鬼になっている。現状ではやはりテストを増やすという地道な方法でしか感染の拡大を抑える方法は無い。

いずれにしても国民の政治、コロナ対策の不信はもはや頂点に達しており、再び政権を揺るがす状態になっている事は間違いない。最大与党であるCDU/CSUに至っては昨今のマスクビジネスのスキャンダルもあり、ここに来て劇的に支持率を落としている。逆に勢いを増している緑の党が肉薄する状況となっており、11月の総選挙は全く予断を許さない状況となってきた。