2021年ドイツ経済は回復するが、かなり先行き不透明

2020年はロックダウンを始めとした数々の経済活動の制限により、誰にとっても厳しい年だった事は間違い無い。しかし、2020年のマイナスは終わってみれば5,0%に落ち着いた。これは2009年のリーマンショック時の落ち込みがマイナス5,7%だった事を考えれば、多くの人が想定したよりもましな数字だと言える。とりわけ第四四半期がプラス0,1%だったのは予想外だった。

確かに11月から準ロックダウン措置になり12月は更にそれを引き締めて、半ばにはシャットダウン措置をした割にプラス成長したのは、ドイツ経済にそこそこの底力がある証かもしれない。当然、国内の消費はガタ落ちなので、得意の輸出と設備投資などで挽回できた模様である。もともと強い輸出はともかく、この時期にコロナ後を見越して設備投資などできる体力のある企業が多い事は結構な事だ。今年は当然コロナ不景気から脱却し、大幅な回復が期待されている。

しかし、さすがにクリスマス前から続き、いつ終わるとも知れないシャットダウン措置で現在は明らかに雰囲気が悪いのも事実だ。DIWは11月の時点では最高でプラス5,3%の回復を見込んでいたが、年末にはおよそ3,5%に下方修正した。ドイツ政府も10月の時点の予想プラス4,4%を3,0%に下方修正している。どうやらコロナ前のレベルに戻るのは、早くても2022年になる。

さすがに国民も皆このコロナ禍で疲れてきており、かなりストレスは溜まっている。国からの手厚い援助があるのは不幸中の幸いでもあるが、休業補償も決してタダで貰える訳ではない。休業補償自体はいわゆる非課税所得になるが、別の税金の累進課税率に影響するので、多くの場合、確定申告で追加税金を払う羽目になる。私もこれでやや目が覚めた。

やはり、この先の経済状況がどのように転ぶかは、現在のコロナ禍を如何に早く切り抜けるかにかかっている。感染者数はかなり落ちてきたものの、目下の所の最大の問題はワクチンの接種が思った程進捗していない事だろう。

これまではバイオンテック/ファイザー、モデルナ、そしてつい最近はアストラゼネカのワクチンがEUで承認されたが、いずれも生産者からの配送が遅れている。特にアストラゼネカはEUと契約した3月末までの8千万本のうち、およそ半分にも満たない数しか配送できないと通告してEUはブチ切れとなった。

アストラゼネカのワクチンは他の2社のように低温保存する必要がない為、短期間での大量接種にかなり期待がかかっていた。イギリスには契約通り配送しながら、何故EUには出来ないのか、理由は何だか知らないが、何にせよ先が思いやられる。因みに、ドイツではアストラゼネカのワクチンはデータが十分でないとして65歳以上には推奨されていない。

全く、この閉塞感だらけの生活がいつ終わるのか知る由もないが、常の毎日が戻って来れば、おそらく今度は企業倒産の連鎖が来る。国からの援助でのみ生き長らえているゾンビみたいな企業が、それなりに多く潜んでいるだろう。そして更に熱りが覚めた頃には、増税とインフレが待ち受けている。

特に増税に関してはどのような形にせよ、私は今後遅かれ早かれ必ず来ると思っている。もちろん、今はまだ生き延びることが先決なので、誰も今そんな事を大きな声で言わないだろう。しかし、ただでさえ地球温暖化問題や労働人口の減少が問題となっている状況で、現在のコロナの補償が将来の増税なしで貰えるなど、楽観的に過ぎるだろう。仮にそのような国民に都合の良い事ばかり言う政治家がいるとすれば、それは無責任であり私は全く信用しない。景気が回復しても、コロナの爪痕は確実に長きにわたって残るだろう。