先週は毎年恒例のユーロビジョン・ソング・コンテスト(ESC)が行われ、ドイツが例によって参加26ケ国中25位と言う惨敗を喫した。昨年はコロナ・パンデミックで開催されなかったが、このESCでのドイツの低迷ぶりは目を覆うばかりである。直近数年の成績をまとめてみると以下のようになる。
2015 : 最下位
2016 : 最下位
2017 : 25位
2018 : 4位
2019 : 25位
2021 : 25位
2018年こそ4位と言う望外の健闘を見せたドイツだが、過去6回のコンテストのうち5回はブービー賞以下という、普通では考えられない低迷ぶりである。普通、音楽の趣向など相当個人差があると思うので、本来このような成績は決して狙っていても不可能だ。
ただ、ここまで酷い成績が毎度続くと言うのは全体のマネジメントが悪いと考えるのが普通である。出場する歌手が毎度酷かったかと言えば、私から言わせれば決してそうではない。
今回ドイツが送り出したのはJendrikと言う男性の歌手で、曲は”I Don’t Feel Hate”と言う曲である。ウクレレを使用したコミカルで軽い曲調にタップダンスを織り交ぜたパフォーマンスだった。指の形の着ぐるみは気持ち悪かったが、そんなに非難されるような出来ではなかったと思う。
しかし、まさにこの毎度「可もなく不可でもない」無難なパフォーマンスというのが落とし穴だろう。このコンテストの順位は視聴者と審査員からの合計得点で順位が決定されるのだが、まず視聴者からの1票を獲得するには、投票するその人にとって「最高」の評価でなければならない。
つまりドイツ得意の失敗をしない、堅実な80点戦略では全く意味が無い。他国は失敗や非難を恐れないインパクトの強いパフォーマンスで、視聴者の記憶に残る。また、ESCで一般的に視聴者に受けが良いとされるのは英語のロック、ポップであり、ドイツは毎度それに倣ったアーティストと曲を送り出してくる。しかし、これも中途半端な出来なら没個性で埋没してしまう。
それどころか今回は1位イタリア、2位フランス、3位スイス、何れのアーティストもそれぞれの母国語でのパフォーマンスだった。確かにドイツ語が歌に向いている言語だとは思わないが、ヨーロッパでも最大の大国のひとつだけに、この際堂々と母国語で曲を披露したらどうか。因みにフランスに至っては完全な舞台音楽の趣がある曲で、流行りの大衆音楽とは完全に一線を画したにも関わらず、視聴者から高ポイントを獲得したのは特筆に値する。
また、審査員ポイントに関してもドイツはたったの3であり、大衆のみならず専門家から音楽、パフォーマンスの質も評価されていない。これも下手に大衆受けを狙って音楽の質を落としているからだと思われる。ジャンルは全く違うが、ベートベンやバッハを生んだ音楽大国の割には、寂しい限りだと言っておく。
もちろん、音楽などと言う趣向に個人差がある分野で順位を付けようなどと言うのはナンセンスかもしれないが、何故送り出す歌手が26人中毎回最下位やらブービー賞という評価をされているのかは真剣に考えた方が良いだろう。