ドイツ、エストニア相手にゴールラッシュで勝利する

昨日はEURO2020予選の3戦目、エストニア戦が行われた。ドイツ代表は既に土曜日にベラルーシ戦を2-0で勝利し、2連勝を飾っている。因みに監督のヨアヒム・レーヴは「スポーツ中の怪我」により入院中で、代わりに指揮を執るのはアシスタントコーチのマルクス・ゾルクである。

今回のエストニア戦で求められる事はEURO予選とあって勝利するのは当然の事、引いた相手をどのようにして崩すかだ。ドイツ代表は昨年終わりから3バックの堅実な守備から快速のFWを活かした縦に速いサッカーにモデルチェンジしてまずまずの成功を収めている。しかし、今回は再び自ら主導権を握るポゼッションサッカーを試される時がやってきた。

そして、今回はそれを踏まえてか、ゾルクは攻撃的なメンバーで久しぶりの4バックを採用した。メンバーはGKがノイアー、最終ラインは右からケーラー、ギンター、ズューレ、シュルツ、中盤にはアンカーの位置にキミッヒ、ギュンドアン、ゴレツカの3人のセントラルMF、FWにはサネ、ニャブリの快速の2人に、中央にロイスを据えた。とりあえず試合を簡単に振り返る。

試合が始まると早速ドイツは速いパス回しで試合の主導権を握る。そしていきなり9分にギュンドアンが右のケーラーに展開し、ケーラーのダイレクトの折り返しをロイスが決めて先制する。圧倒的に試合を支配するドイツは更に17分にニャブリ、20分にゴレツカ、26分にはゴレツカが倒されたPKをギュンドアン決めて早くも4-0。更に36分にはロイスがゴール正面20メートルから直接フリーキックを決めて5-0とした。

エストニアは5バックという超守備的な布陣で臨んできたが、その守備は極めて消極的だ。ドイツのパス回しに右往左往するばかりである。ドイツは多彩な攻めからチャンスを雨あられの如く創出し、前半だけで既に15本のシュートを見舞った。

後半ドイツはややテンポを落としたものの、依然として圧倒的に試合を支配する。更にニャブリ、交代で入ったヴェルナー、締めはサネが決めて8-0とし、3年前の対サンマリノ戦以来の記録的な大勝となった。また、この試合を通じてドイツは82%という圧倒的なポゼッション率を記録し、エストニアは試合を通じてほぼ自陣に貼り付け状態であった。

確かにエストニアはあまりにも弱く、ドイツの強さを測る物差しにはならないが、何れの得点も非常に美しいコンビネーションから生まれたもので、非常にエンターテイメント性の高い試合になった。

この試合で最もその能力を遺憾無く発揮したのは、今回もやはりマルコ・ロイスだろう。ロイスはこの日3トップの中央で先発し、そのポジションに囚われない多彩な動き、テクニック、スピード、アイデア、キックで圧倒的な存在感を見せた。ロイスのFW起用はもはや代表ではご破算かと思っていたが、組み合わせによっては活きる事がひとまず確認された。これはレーヴの代わりを務めたゾルクの采配が当たったと言えるだろう。しかしこの選手、本当に怪我が多かった事が惜しまれる。

因みにこの日ロイスは直接フリーキックも決めたが、これはドイツ代表にとって何と2007年以来になる。ロイスの右足のキックは縦カーブで大きく落ち、更に角度もないとこから狙えるので、かなりの脅威になる。更にもう1人、脅威のフリーキックを持つのがレロイ・サネ、しかもこちらは左足だ。チャンピオンズリーグ、シャルケ戦で見せたフリーキックは圧巻という他ない。

更にこの日素晴らしいパスでドイツの攻撃をコントロールしたイルカイ・ギュンドアンも出色の出来だったと言える。このポジションは通常トニ・クロースの指定席でもある。クロースは長いパスの精度に定評があるが、ギュンドアンはクロースよりも小回りが利き、ゴール前にも飛び出せる。あくまで攻撃という面では、ギュンドアンに一日の長があるのではないか。

しかし、この試合の最大の収穫は何と言っても再びドイツが観客を盛り上がらせる上質のサッカーを見せた事だろう。ここ数年は代表戦となると完全な白けムードの時もあり、昨年終わりにはFCバイエルンの3人を構想外にするなど物議も醸したが、先のオランダ戦以降、ファンの声援も再び大きくなってきた感がある。次戦は9月初めホームでのオランダ戦になるが、この試合は本戦の行方を占う意味でも重要なものになるだろう。