紛れもなくドイツ代表の中心選手にまで成長した、セルジ・ニャブリ(EURO2020予選、北アイルランド戦)

オランダ戦の惨敗の余韻が冷めやらぬまま、ドイツ代表は今週の月曜日にアウェーで北アイルランドと対戦した。北アイルランドはドイツ、オランダが同居するグループCで4連勝を飾り現在首位をキープしている。もっとも、北アイルランドはこの両国とはここまで対戦しておらず、あくまでも暫定首位だ。アウェーとはいえドイツはこの試合に確実に勝利して、予選突破に向けて大きく前進したい。

ドイツが攻める時間が長くなる事が予想されるこの試合、ヨアヒム・レーヴはオランダ戦の中央を固めた3バックから4バックに変更、更に前線はロイス、ニャブリ、ブラント、ヴェルナーの4人のFWを同時に起用した。明らかにゴール前で守備を固めてくる相手を想定した布陣である。

しかし、試合が始まるとこの予想は見事に裏切られることになる。北アイルランドは開始早々からドイツの弱点はビルドアップだと言わんばかりに前線から猛烈なプレスをかけてきた。これに完全に面食らったドイツは後方でミスを連発し、全くリズムが掴めない。7分には自陣深くでのクロースのパスミスからGKと1対1になる決定的なチャンスを許す。これは辛くもノイアーが防いだ。

その後はテクニックに勝るドイツが徐々に盛り返すが、その攻撃は単発の感が否めない。中盤高い位置でボールを支配できず、たまに良い形でボールを奪って攻め込んでもラストパスの精度が悪い。4人のスピードのあるFWが絡むコンビプレーは一見すると鮮やかだが、複雑かつ技巧を凝らしすぎな感がある。これも、中央で構える大型FWの育成を怠ったツケだ。

前半終了間際にはノイアーが右サイドからのシュート性のクロスを相手FWの眼前に弾き、これは「終わった」と思ったが、奇跡的に無失点で切り抜けた。総じて言えば五角の展開とは言え、戦前の予想から言えば明らかに北アイルランドの術中にハマっている。前半は0-0で終了した。

しかし、ドイツは後半開始早々北アイルランドの激しいプレスを攻略することに成功した。FWのニャブリがタイミングよく中盤に下がり、比較的スペースのあるバイタルエリア付近でボールの受け手となったからだ。そして、そのニャブリが開けたFWのスペースにサイドバックが走り込みチャンスを創出した。ドイツは47分に右サイドのクロスから左サイドバックのハルステンベルクが鮮やかなボレーシュートを決めて先制する。

それから60分までは圧倒的に試合を支配したドイツだが、その後は再び北アイルランドが盛り返し同点ゴールの決定的ピンチを迎えるなど、どうもパッとしない。68分に再び中盤のキープ力を上げるべく、レーヴはヴェルナーに代えてハーヴァーツを投入する。これで試合は再び落ち着き始めた。

更にレーヴは85分にロイスに代えて守備的MFのチャンを投入し、完全に1点のリードを守り切る戦術に出た。2人の攻撃的MFを同時に投入したオランダ戦とは打って変わって堅実な選手交代だ。ドイツは終了間際にハーヴァーツのスルーパスからニャブリが角度のない位置からボールを流し込み追加点を加え2-0で勝利、予選突破に大きく前進した。

終わってみればシュート本数21対5、ボール支配率は74%を記録し、データだけなら完勝に見える試合だったが、一歩間違えば負けてもおかしくない試合だった。特に前半終了間際の大ピンチを逃れたのは奇跡であり、これが入っていたら勝負は全くわからない。後半どん引きされてそのまま敗北なんて事も十分あり得る。

もっとも、後半自らの力で相手の激しい前線からのプレスを潜り抜けてチャンスを創出したのは評価に値する。特に後半早々チャンスの起点になったニャブリのクレバーさは特筆すべきだ。現在のドイツでは図抜けて得点力が高いだけでなく、ピッチ上での構造的な問題を解決できる能力がある。

レーヴは既にニャブリの不動のスタメンを確約しているが、これに異論を唱える者はいない。EURO2020ドイツの攻撃の核は、紛れもなくこのニャブリになるだろう。

そしてもう一人、ドイツの攻撃にとって大きな伸び代があるとすれば、それはカイ・ハーヴァーツだ。ハーヴァーツのテクニック、視野の広さはあのメスト・エジルを彷彿とさせる。188cmの長身もあり、この日はヘディングで惜しいチャンスもあった。今年はチャンピオンズリーグも控えており、更なる成長が期待される。