遂にEURO2021が開幕し、これからおよそ1ヶ月間ドイツはサッカー一色となる。ドイツ代表の初戦は火曜日、相手は優勝候補筆頭となるフランスである。おそらく、グループリーグで最も注目される好カードだろう。
ロシアW杯優勝を引っ下げ、各ポジションに依然として錚々たるメンバーを揃えるフランスは個人能力だけで言えばもはや手の付けられない強さを誇る。ムバッペなどはもはや反則と言えるスピードでFCバイエルンもチャンピオンズリーグで煮え湯を飲まされた。
一方のドイツはロシアW杯でグループリーグ惨敗の後、試行錯誤を繰り返し昨年にはスペインに0-6で惨敗、更には今年に入っても弱小国、北マケドニアに敗れるなど絶望的な戦績であり、下馬評ではフランスの優位は動かない。
しかし、私は敢えて今回ドイツがフランスにひと泡吹かせる可能性はあると踏んでいる。これはもちろん私の希望的観測も含まれてはいるが、決してドイツにとって悲観的になるような状況ではない。
まず、ドイツは前回のテストマッチ、ラトビア戦でかなりの手応えを得る内容を見せ7-1で勝利した。もちろんラトビアと言う弱小国に何点差で勝利しようが、それはフランス戦の参考にはならない。しかし、重要なのはこの試合で遂にドイツは「これだ」と言える現時点での最高のメンバー、システムを確立した。
まずはドイツは世界屈指の実力がありながら、長らく戦力外となっていたミュラー、フンメルスが復帰し、これでドイツの戦力アップした事は火を見るより明らかだ。
ミュラーの実力は既にクラブシーンで証明済みであろう。ここで重要なのは、ミュラーは単なる優秀な個人プレーヤーではなく、チームをオーガナイズできる点だ。ボールのない所での司令塔として、ミュラーはチーム力を格段にアップさせる力を持っている。これにハーヴァーツ、ニャブリ、サネ、ヴェルナーなどを加えた攻撃陣は決してフランスに引けを取らない。
更に3バックの中央にフンメルスが座る事でドイツの守備陣への負担が劇的に軽減される事は間違いない。というのも、改めて見てもフンメルスの足元の巧さ、展開力はDFとしてずば抜けており、相手の高い位置からのプレスを回避するだけでなく、攻撃の起点にもなり得る。更にレーヴはキミッヒを右サイドに移す事で、クロース、ギュンドアンという世界屈指の名手を中盤を配置し、至る所から攻撃の起点を作る事を可能とした。
こうしてみれば、やや守備に不安が有るとは言え、やはり中盤から前線のドイツの陣容は世界屈指だ。ヨアヒム・レーヴが変な策を弄して自滅しない限り、好勝負を演じるだけの要素は十分にある。ここ最近のフランスとの試合同様、フランスの強力な個人能力に対し、ドイツはあくまでも組織力で対抗する事になる。
スタメンはGKノイアー、DFは右からギンター、フンメルス、リューディガー、MFは右からキミッヒ、ギュンドアン、クロース、ゴーセンス、FWはミュラー、ハーヴァーツ、ニャブリとなる筈だ。
ドイツにとって肝要なのは、やはり出来るだけボールキープをし、オープンな展開を避ける事だろう。走り合い、身体能力の勝負になればフランスには敵わない。特に前半を出来るだけ落ち着いた展開で切り抜ける事だ。これまでの傾向から言って、3バックにした試合は必ず後半にバテが来るだけに、後半ヨアヒム・レーヴが繰り出す選手交代も非常に重要な要素になる。
個人的にフランスで厄介な選手だと思っているのが、代表に復帰したベンゼマである。この選手は何度もレアルのFWとしてFCバイエルンの前に立ちはだかった。巧いだけでなく、実にクレバーで味方を活かすのが上手いという印象を持っている。多くの場面で直接対決するであろうベンゼマとフンメルス、両ベテランの出来は勝敗を左右する非常に重要なポイントになるのではないか。
もう一つ忘れてはならないのが、この試合はミュンヘンのアリアンツ・アレーナ、つまりドイツのホームで行われる事になる。これは明らかにドイツにとって有利な条件だろう。当日は14000人の観客が許可されており、殆どはドイツサポーターになる。
ドイツはこの試合、引き分け狙いの下手な小細工は必要ない。仮に敗れたとしても、世界チャンピオン相手に良い内容を見せれば大きく士気は上がる。世界最高レベルの真っ向勝負を期待したい。